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 遥か遠くのようで、それでいて間近に聞こえる低い唸り声に、まだ半分眠っていたおれは完全に目を覚ました。よっこらしょと身体を起こして隣のベッドを覗き込む。
「おはよう、夏江」
 うつ伏せの状態から肘で上体を支えて起き上がろうとしていた夏江が動きを止めた。
「悪い。起こしたか?」
「ううん。それよりどうしたの?」
「脚が……だるい」
「もしかして筋肉痛?」
「……そうとも言う」
 やっぱり。昨日の山歩きで普段使ってない筋肉を使ったんだな。編集さんは運動不足になりがちだから。あ、まんが家もだけど。
「でもよかったじゃん。筋肉痛が来るのが明日とか明後日とかじゃなくて」
「明後日って……」
 夏江がガクリと枕に突っ伏す。おれ、なんかいけないこと言っちゃった?
「そうだ! 脚のマッサージしてあげる!」
 おれはベッドに上がり、掛け布団を剥いで夏江の足元に正座した。
「うつ伏せのほうがやりやすいかも」
 夏江は素直にうつ伏せになった。普段は夏江がおれにまるでお母さんのようにあれこれ指図するばっかりなのに――間違わないでほしいんだけど、おれは夏江の言うことを聞くのが好きなんだ――今日は夏江がおれの言うことを大人しく聞いてる。やだ、かわいいかも。
「痛かったらゆってね」
 夏江のふくらはぎに触ると、筋肉が硬くなっているのがわかった。それを丁寧に揉み解す。
「どう?」
「イタ気持ちいい。もっと力強くしても大丈夫だぞ」
 言われたとおり力を入れて「このくらい?」と訊ねると、「まだ全然平気」と夏江。おれは指先に思いっきり体重を乗せた。
「このくらいはどう?」
 すると夏江は苦笑混じりに「うん、ちょうどいいよ」と言った。もしかしておれって力ないの? たま~にエリちゃんの肩を揉まされて「ヘタクソ」と罵られる程度で、普段から誰かをマッサージすることなんてないから、力加減なんてわからないもん。しかも手がちょー疲れる。けど愛があるからね。愛のパワーで夏江の筋肉痛を治しちゃうぞ!
 そのとき夏江が「はい、ありがとう」と言って起き上がった。
「え、もういいの?」
「うん。今度は交代。ほら、寝て」
 拍子抜けしたおれは、夏江に言われるままにうつ伏せになった。夏江がおれの背中を跨ぐようにして膝立ちになる。きゃー、夏江ってば大胆! ベッドのスプリングの軋む音が妙に生々しくて、心臓が破裂しちゃいそう。
「なんかすごいドキドキする」
「マッサージされ慣れてないのか? 大丈夫だよ、あんまり痛くしないから」
 いや、そういう意味じゃなくて。てか「痛くしないから」ってその言い方もなんだかえっちい。
 おれがなにを考えてるのか知る由もない夏江は、おれの背中に両手をあて、親指の腹で肩甲骨の内側に沿って押し始めた。
 あっ、なにそこ。気持ちいい!
「やっぱり凝ってるな。まあ、職業病だから仕方ないか」
 夏江の指が絶妙な力加減でおれの気持ちいいところを的確に捉えていく。それまで固く閉じていた身体を少しずつ開かれる感じ。ああ、緩んでいく……。
「夏江ぇ、気持ちいいよぉ」
 それに応えるように夏江の親指が背骨に沿ってゆっくりと下りていく。そしてあるポイントに達したとき、なにかがぞくりと背筋を駆け上がった。
「ぅん……っ」
 堪え切れず鼻から抜けた自分の声に自分でびっくりする。
 やばっ、変な声出ちゃった! 夏江、引いちゃったかなぁ。けど……けど……。
「はあんっ、そこ……なんかへんっ」
 すると夏江の手がびくりと止まった。それからガバッと立ち上がり、慌てた様子でベッドから下りて寝室を出ていく。
「やっぱりこっちのソファに座ってやろう」
「う、うん……?」
 突然どうしたんだろう。急いで夏江のあとを追ってリビングに移動すると、ソファの脇で夏江が足の指を押さえて蹲っていた。
「く……っ」
 すぐにピンときた。おれもよくやるから。
「足の小指ぶつけたの? 大丈夫?」
 夏江はぎこちなく立ち上がり、顔を隠すように眼鏡のブリッジを長い中指で押し上げた。乱れた前髪が眼鏡にかかる。
「大丈夫だ」
 心なしか夏江の耳が赤い気がする。本当に大丈夫なのかなぁ。
 おれがソファに座るとマッサージが再開された。今度は肩から首、頭の先まで丹念に揉み解される。本当に気持ちよすぎて涎が出そう。
「夏江、すごく上手だね。誰かに習ったの?」
「ああ、同じフロアのよその編集部にマッサージ師の資格を取ったヤツがいて、そいつに教わったんだ」
「編集さんがマッサージ師?」
「そいつは正社員じゃなくて契約だから副業を持ってもいいんだよ。今、出版業界は不況だし、うちだっていつどうなるかわからない。そうなったら真っ先に切られるのは契約の人間だからな。マッサージ師ならまんが家相手だけでも食ってはいけるだろう」
「へえ」
 その人の周到さには感心するけど、はっきり言ってそんなことはどうでもよくて、おれには夏江のほうが心配だった。
「夏江は大丈夫? クビになったりしない?」
 すると夏江はおれの隣に腰を下ろし、今度は腕から指先まで丹念にマッサージしていく。
「心配するな。俺は正社員だからすぐには切られないよ」
 その言葉にほっと胸を撫で下ろした。
「よかった。おれの収入じゃまだふたりで食べていくのは無理だから」
 夏江は愉快そうに笑い声を上げた。
「じゃあ、俺を養えるくらい売れっ子になってくれよ、春田先生」
「夏江……」
 それって……もしかしておれと夏江はこれからもずっと一緒ってこと? おれが売れっ子になれば、おれたちはおじいちゃんになるまで一緒にいられる?
 おれは首がもげそうなくらいブンブン頷いて、おれの手を揉む夏江の手をぎゅっと握った。
「がっ、がんばるっ!」
 夏江は苦笑気味に微笑んで、それからひとりごとのように呟いた。
「おまえに養われるのも悪くないかもな」





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【8/12】
誠に勝手ながら当ブログを
活動休止とさせていただきます。

【5/16】
すいません。
現在、潜伏中です。

【5/7】
突然ですが模様替えをしました。
慣れないうちはなにかとご不便を
おかけするかもしれませんが、
何卒ご容赦くださいませ。

【4/23】
「お久しぶりです」の方も
「はじめまして」の方も
こんな隅っこブログにお越しいただき
どうもありがとうございます。
ご挨拶が遅れてすみません…。
ぼちぼち更新してまいりますので
これからもよろしくお願いいたします。


【1/3】
あけましておめでとうございます。
昨年中はこんなぐだぐだなサイトを
見捨てずに応援してくださり
本当にありがとうございました。
今年もお付き合いいただけると
うれしいです♪
どうぞよろしくお願いいたします。


【11/3】
長らく放置してすいません><
こんな状況でも訪問してくださる方
本当にどうもありがとうございます!
ひとことでも感想などいただけると
朔田が泣いてよろこびます~。


【6/14】
ご無沙汰してます。本文の文字を
ちょっぴり大きくしてみました。
少しは読みやすくなったかな?


【4/21】
現在、ちょーゆるゆる更新中です。
忘れた頃になにかがアップされてる
…かも……?


【1/19】
「浅葱色の少年」は完結しました。
応援してくださったみなさま、
どうもありがとうございました!


【1/15】
新作「浅葱色の少年」を更新中です。
かすかにBLが薫るお伽噺みたいな?
楽しんでいただければ幸いです♪


【1/15】
趣味でやっていた〈ひとり光画部〉は
閉鎖しました。ご愛顧ありがとうござ
いました。


【1/15】
「石榴館」はすてき絵師・東風さんと
一緒に遊んでる吸血鬼シリーズです。
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管理人:朔田圭子(さくた けいこ)

さくたはめがねがだいすきだよ。それからかえるとかすなふきんとかみどりいろのものがすきみたい。 めーるふぉーむだよ♪ さくたがなんかゆってるww
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