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 今月もなんとか無事に青刷りのチェックを終えてほっと息をつく。今日は早めに帰れそうだと春田にメールを送ると、すぐに返事が返ってきた。
『今日はお弁当とお惣菜をもらって帰るから夕飯の支度はいらないよ^^』
 俺は『了解』と返す。春田はこうして時々バイト先の弁当屋から売れ残った弁当や惣菜をもらって帰ってくる。春田なりに少しでも俺の負担を減らそうと気を遣っているのかもしれないが、俺は料理をするのが苦にならないタイプなのだ。むしろ好きと言ったほうがいいかもしれない。けれど春田の気持ちはうれしいし、春田のバイト先の弁当はおいしいのでありがたく頂くことにしている。
 スーパーに寄らずにまっすぐ帰宅すると、リビングのソファで招かれざる客がまるで自分の部屋にでもいるように寛いでいた。彼は俺の姿を見るなり立ち上がり、前で両手を揃えて会釈した。
「お帰りなさいませ、ご主人さまぁ」
 この「ご主人さまぁ」のところで顔を上げ、小首を傾げながら上目遣いで俺を見つめる芸の細かさに身震いする。
「秋吉、気持ち悪いから」
「なんだとぉ!」
 メイド気どりが一瞬でただのイタイ友人に返る。どうせなら正気に返ってほしかった。
「じゃあ春田ならいいのか? 春田のメイドならかわいいのか?」
「えっ、おれ?」
 いきなりお鉢がまわってきて目を丸くする春田を振り返り、頭の中でメイド服を着せてみる。
 まあ、春田なら……いや!
「そういうことを言ってるんじゃない!」
 危うく認めてしまうところだった。
「春田、もうこいつを部屋に上げなくていいから」
 すると秋吉は口元で両の拳をぎゅっと握った。
「いやん、諭史さまったらいけずぅ」
 ぞわっと鳥肌が立った。
「だからその気色悪い芝居をやめろ! あと下の名前で呼ぶな!」
 再び男に戻ってソファに踏ん反り返る秋吉。
「帰ってくるなりなんでそんなにカリカリしてんだよ。生理か?」
 徒労感に襲われて俺は大きく息を吐き出した。
「おまえ、なんでここにいるんだよ。自分の部屋に戻れよ」
「やだよ。オレも一緒に弁当食う。冬木のやつ仕事で今夜オレはひとりぼっちなんだ。かわいそうだろ」
「そんなこと言われてもおまえの分なんて……」
 嫌な予感はしたが、一応「ないだろ?」と春田に確認する。案の定というか予感は的中し、春田はこの場合どっちが正解だかわからないという表情で、ビニールのレジ袋から弁当を取り出してローテーブルに並べた。
「なんか……いっぱいあるね……」
「ほんとに春田はいい子だなぁ」
 そう言うなり秋吉は春田の腕を掴んで引き寄せた。非力な春田はバランスを崩し、「あっ」と声を上げながら秋吉の膝の上に倒れ込んだ。そのまま秋吉の腕に抱きかかえるように捕えられ、中指にチョークだこのある大きな手で柔らかい癖っ毛をくしゃくしゃと掻きまわされる。
「やっ、やめてよ~」
 頬を上気させて必死にもがく春田は、逃れようとすればするほど秋吉の腕にがっちりと拘束されて身動きがとれなくなっていく。その様子になぜだか俺はイラついた。秋吉の好きにさせている春田に無性に腹が立った。いや、べつに好きにさせているわけではないだろう。春田はなにも悪くない。けれどこの不快さはどうにもならない。俺は不機嫌を隠そうともせず、春田の腕を掴んで秋吉から引き剥がした。
「痛っ……」
 一瞬、春田が怯えた目で俺を見た。はっとして腕を放す。その場を取り繕うように「春田、お茶淹れてきて」と言うと春田は素直に頷いた。
「う、うん」
 小さくなってキッチンへ駆け込む春田の背中に内心で舌打ちする。
 くそっ、なにやってんだ俺は。
 気づくと秋吉が俺を見ていた。
「なんだよ」
「べつに~」
 明らかに含みのある笑みを浮かべている。こいつ、わざとやったな。俺をからかって楽しいか? もうこいつに引っ掻きまわされるのは御免だ。文句を言ってやろうと口を開きかけたそのとき、秋吉に先手をとられた。
「あれから例のノイローゼ先生の様子はどう?」
 完全に出鼻を挫かれた俺はいったん引いて体勢を立て直そうと、ラグの上に腰を下ろした。
「ああ……とりあえず落ち着いてるよ」
 以前ほどネットの掲示板を覗いてはいないようだし、電話がかかってくる回数も減った。それどころか今度はひとりで山歩きに行くとか、一眼レフカメラを始めたいとか言い出した。仕事の妨げになると困るのだが、今のところちゃんと原稿も描いているようだし、いい傾向だと思う。
「山を歩いた甲斐があったってわけか。よかったなぁ、身近に友だち思いの親友がいて」
 秋吉は銀縁の眼鏡の奥で慈悲深い微笑を湛えた。こういうやつが詐欺師に向いてるのだろう。俺は内心「このヤロー!」と拳を握りながらも、感謝しているのは事実なので精一杯大人な対応をする。
「おまえと冬木のおかげだよ。ありがとう」
 秋吉先生は満足そうに頷いた。
「よくできました」
 ダメだ。やっぱり一発殴りたい。
 そこへ春田がトレーにお茶の入った湯呑を3つ載せ、緊張の面持ちでぎこちなく歩いてきた。その緊張が見ているこちらにも伝わってきて、俺まで手のひらに汗をかいてくる。
「お、お待たせぇ」
 それを見て「ぷっ」と噴き出したのは秋吉だ。
「なあ、こんなのいなかった?」
「こんなの?」
「ああ! お茶を運ぶからくり人形だ!」
 それは俺も前に思った。けれど他人に言われるとなんとなくおもしろくない。
「ほら、かせよ」
 春田からトレーを受け取り、ローテーブルにお茶を置く。春田は俺の顔色を窺いながら、空いている秋吉の隣に座ろうとした。さっき腕を掴んだときに一瞬見せた春田の表情を思い出す。自分の感情に任せてかわいそうなことをしてしまった。春田が秋吉の隣を選ぶのも無理はない。無理はないと思うけど……。
「春田、おまえはこっち」
 俺はポンポンと自分の隣を叩いた。極力やさしく、穏やかに。するとそれまで曇っていた春田の顔がぱっと晴れ、愛玩犬のごとく俺の隣にお座りをして尻尾を振る。そんな春田の反応にようやく安堵し、秋吉に対してわけのわからない優越感すら抱きながら弁当の蓋を開けた。
「うまそうだな」
 またしても秋吉が意味ありげにこちらを見ているのがわかったが、あえて気づかないふりをした。





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【8/12】
誠に勝手ながら当ブログを
活動休止とさせていただきます。

【5/16】
すいません。
現在、潜伏中です。

【5/7】
突然ですが模様替えをしました。
慣れないうちはなにかとご不便を
おかけするかもしれませんが、
何卒ご容赦くださいませ。

【4/23】
「お久しぶりです」の方も
「はじめまして」の方も
こんな隅っこブログにお越しいただき
どうもありがとうございます。
ご挨拶が遅れてすみません…。
ぼちぼち更新してまいりますので
これからもよろしくお願いいたします。


【1/3】
あけましておめでとうございます。
昨年中はこんなぐだぐだなサイトを
見捨てずに応援してくださり
本当にありがとうございました。
今年もお付き合いいただけると
うれしいです♪
どうぞよろしくお願いいたします。


【11/3】
長らく放置してすいません><
こんな状況でも訪問してくださる方
本当にどうもありがとうございます!
ひとことでも感想などいただけると
朔田が泣いてよろこびます~。


【6/14】
ご無沙汰してます。本文の文字を
ちょっぴり大きくしてみました。
少しは読みやすくなったかな?


【4/21】
現在、ちょーゆるゆる更新中です。
忘れた頃になにかがアップされてる
…かも……?


【1/19】
「浅葱色の少年」は完結しました。
応援してくださったみなさま、
どうもありがとうございました!


【1/15】
新作「浅葱色の少年」を更新中です。
かすかにBLが薫るお伽噺みたいな?
楽しんでいただければ幸いです♪


【1/15】
趣味でやっていた〈ひとり光画部〉は
閉鎖しました。ご愛顧ありがとうござ
いました。


【1/15】
「石榴館」はすてき絵師・東風さんと
一緒に遊んでる吸血鬼シリーズです。
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石榴館 作品紹介

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管理人:朔田圭子(さくた けいこ)

さくたはめがねがだいすきだよ。それからかえるとかすなふきんとかみどりいろのものがすきみたい。 めーるふぉーむだよ♪ さくたがなんかゆってるww
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