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創作BL小説ブログ
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 バイト代をもらいに久々にエリちゃんの部屋を訪れると、入れ違いに玄関から女の人が出てきた。女のわりには長身で、もしかしたらおれよりも背が高い。頭の天辺で緩くおだんごを結ってるから大きく見えるだけかもしれないけど。すれ違いざまにぺこりと頭を下げられ、おれも慌てて会釈した。
 あ、今流行りの大きめのウェリントン型。しかも赤! アラレちゃん?
 う~ん、このへんでは見かけない眼鏡だなぁ。エリちゃんのアシさんでも担当さんでもなさそう。ウェリントン型ってたしか昔流行った眼鏡だよね。海外のスターがかけて話題になったやつだよね。ん? あれはボストン型だっけ? どっちもダサ眼鏡って言われてるけどおれはかわいいと思うな。でも夏江にはどうだろう。夏江は横長のスクエアが一番似合うけど、ウェリントンとかかけるとかわいくなるのかなぁ。かわいい夏江ってどんなだろう。見てみたい気もする。お願いしたらかけてくれるかなぁ。
 そんなことを考え込んでいると、エリちゃんが怪訝そうに声をかけてきた。
「なにしてんの? そんなとこ突っ立ってないで中に入りなさいよ」
 おれは言われるままに部屋に上がり、みんながご飯を食べたり編集さんと打ち合わせをしたりするダイニングでいつもの席に腰を下ろした。それからキッチンに立つエリちゃんに訊ねる。
「ねえ、今のアラレちゃん眼鏡の人はだあれ? 見たことない眼鏡だった」
「あんた、人を眼鏡で識別すんのやめなさいよ。だから人の顔を覚えないのよ」
 たしかに人の顔を覚えるのは得意じゃないけど、必要があればちゃんと覚えるもん。
「で、誰?」
 両手に大ぶりのマグカップを持って戻ってきたエリちゃんは、片方のカップをおれの前に置いて向かいの席に座った。コーヒーの香りをのせて白い湯気が立ち上る。
「同業者。同じ雑誌で描いてるの」
「へえ。じゃあ、あの人もBLまんが家なのかぁ」
「そうよ。たまにBL以外も描いてるけど。あ、彼女も眼鏡好きだからあんたと気が合うんじゃない?」
「えっ、眼鏡かけてる人にも眼鏡萌えってあるの?」
「そりゃあるんじゃないの? 私はないけど」
 うん、エリちゃんが眼鏡に萌えるって話は聞いたことない。もしエリちゃんが眼鏡萌えの人だったら絶対に夏江には会わせたくないよ。
「眼鏡の話はもういいわ。それより愛しの夏江くんとはその後どうなの?」
「どうって……べつに」
「べつにって、なんにもないの?」
 キリッ……。
「……ないよ」
 本当はなくはない。最近、夏江の態度がちょっと変だ。急に無口になったり不機嫌になったり、かと思えばすっごくやさしくなったり。夏江がなにを考えてるのかわからないから、その度におれは天国と地獄を行ったり来たりしてる。
 キリ、キリッ……。
 この前なんか唐突に「おまえにリビング側をやるから部屋を完全に分けないか?」とか言い出して、おれはショックのあまり大好きな夏江のカレーをおかわりできなかった。だっておれは今のまま、テレビを見るのも本を読むのも眠るのも夏江と一緒がいい。でもそんなことは言えないから「居候のおれがひと部屋占拠するのは申し訳ないし」と殊勝なことを言ってみた。それに夏江はあの部屋にいてもいいって言ってくれたけど、それはおれが夏江のまんが家だからだし。もしも担当が変わったり、おれが描けなくなったりクビになったりしたら、夏江と一緒に暮らす理由がなくなる。そのときはあの部屋を出ていかなくちゃならない。だからなるべくおれがいてもいなくても、夏江の生活に変化がないようにしなきゃいけないと思ってる。
 そんなこと考えるのイヤだけど。
 考えるだけで泣いちゃいそうになるけど。
 キリッ。
 とりあえず家庭内別居……じゃなくて完全個室化の話は流れた。でもまだまだ安心してる場合じゃない。これからもずっと夏江の傍にいられるようにがんばらないと。がんばって一人前のまんが家にならないと。
 キリ、キリ、キリ……ッ。
「い、痛い……」
 なんだろう。さっきからお腹の上のほうが痛い。
「え? なに?」
 驚いたエリちゃんが身を乗り出してくる。おれは鳩尾のあたりを押さえてテーブルに突っ伏した。
「なんか、キリキリってする……」
 それを聞いたエリちゃんは納得した様子で椅子に座り直した。
「ああ、また神経性の胃炎じゃないの? あんた大学を卒業した頃もずっと薬飲んでたじゃない」
「うん……」
 そう、夏江に見捨てられたときだ。あのときは本当にヤバかった。病院で胃カメラも呑んだ。結局ただの神経性胃炎だったけど。
「いつも能天気そうな顔してるくせに意外と繊細なんだから、腹ん中に溜め込んでないで小まめに吐き出しなさいよ。私がいるじゃない」
 なんと! エリちゃんがおれにやさしい!!
 なんだかんだ言ってエリちゃんは本当はやさしい人なんだ。家を出たおれの面倒も見てくれてたし、おれがまんが家になりたいって言ったときも、エリちゃんは笑わずにちゃんと話を聞いてくれた。おれにまんがの描き方を教えてくれた。エリちゃんだけがおれの味方だった。
「エリちゃん……」
 ありがとう――そう言おうとしたそのとき、エリちゃんは真剣なまなざしでおれを見つめてきた。
「あんたの腹ん中にあるものは、あんたにとってはただのストレスでも、私にとってはまんがのネタなんだから」
 言い終わるとエリちゃんはすっと席を立った。
「…………」
 うん、わかってたよ……。
 エリちゃんのそういうところも昔から知ってた。一瞬、忘れかけてたけど。
 小さい頃はよくエリちゃんに泣かされたなぁ。一度だけ「なんでそんなにいじわるするの?」って訊いたことがあったっけ。そのときエリちゃんは「だってあんたの泣き顔が見たいんだもん」って答えたんだ。鬼だよね。今は今でおれが泣いてると「鬱陶しい!」って怒るし。どっちにしてもおれがかわいそう。
 パタパタとスリッパの音が近づいてきて、おれは顔を上げた。
 あ……。
 エリちゃんの手には牛乳の1リットルパック。
「ほら」
 そう言ってエリちゃんはおれのコーヒーに牛乳を入れてくれた。
「エリちゃん……」
 思いもよらない展開に、思わず涙腺が緩んでくる。
 こーゆうのって反則じゃない? やっぱりエリちゃんの半分はやさしさでできてるの? 普段は黒エリちゃんで、今おれの目の前にいるのが白エリちゃん? てかエリちゃんはどうあってもおれを泣かしたいみたい。
 「ありがとう」の代わりに、堪え切れなかった透明の雫がひとつ、黒褐色と白のマーブルの中にポチャンと落ちた。





目次へ25.ご主人様は不機嫌 へ27.真実の言葉 へ





BLなのに女が出張っててすいません~^^; 

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誠に勝手ながら当ブログを
活動休止とさせていただきます。

【5/16】
すいません。
現在、潜伏中です。

【5/7】
突然ですが模様替えをしました。
慣れないうちはなにかとご不便を
おかけするかもしれませんが、
何卒ご容赦くださいませ。

【4/23】
「お久しぶりです」の方も
「はじめまして」の方も
こんな隅っこブログにお越しいただき
どうもありがとうございます。
ご挨拶が遅れてすみません…。
ぼちぼち更新してまいりますので
これからもよろしくお願いいたします。


【1/3】
あけましておめでとうございます。
昨年中はこんなぐだぐだなサイトを
見捨てずに応援してくださり
本当にありがとうございました。
今年もお付き合いいただけると
うれしいです♪
どうぞよろしくお願いいたします。


【11/3】
長らく放置してすいません><
こんな状況でも訪問してくださる方
本当にどうもありがとうございます!
ひとことでも感想などいただけると
朔田が泣いてよろこびます~。


【6/14】
ご無沙汰してます。本文の文字を
ちょっぴり大きくしてみました。
少しは読みやすくなったかな?


【4/21】
現在、ちょーゆるゆる更新中です。
忘れた頃になにかがアップされてる
…かも……?


【1/19】
「浅葱色の少年」は完結しました。
応援してくださったみなさま、
どうもありがとうございました!


【1/15】
新作「浅葱色の少年」を更新中です。
かすかにBLが薫るお伽噺みたいな?
楽しんでいただければ幸いです♪


【1/15】
趣味でやっていた〈ひとり光画部〉は
閉鎖しました。ご愛顧ありがとうござ
いました。


【1/15】
「石榴館」はすてき絵師・東風さんと
一緒に遊んでる吸血鬼シリーズです。
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石榴館 作品紹介

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管理人:朔田圭子(さくた けいこ)

さくたはめがねがだいすきだよ。それからかえるとかすなふきんとかみどりいろのものがすきみたい。 めーるふぉーむだよ♪ さくたがなんかゆってるww
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