忍者ブログ
創作BL小説ブログ
ADMIN | WRITE | RESPONSE
■□ [PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 真紘のために自分にできることがあるのなら、なんでもしてやりたい。
 鷹也は常々そう思っていた。
 けれど、あの日以来、鷹也の脚は真紘のアパートから遠のいていた。先週の土日も顔を出していない。真紘には会いたいが、わずかな量とはいえ謙司の遺骨を持ち出す決心がつかなかった。
 なによりも、そうまでして謙司の記憶を守ろうとする真紘に、苛立ちを感じていた。
 真紘にとって、謙司はどんな存在だったのだろうか。
 そして、謙司にとっての真紘とは。
 今更ながら、ふたりの関係が気になって仕方がない。おかげで学校の授業にも身が入らない。
 昼休み、窓辺でぼんやり外を眺めていると、突然背後からヘッドロックをかけられた。
「うっ」
「鷹也、なに見てんの?」
 クラスメイトの加納だ。彼とは中学校からの付き合いで、互いに気心の知れた仲である。
 加納は鷹也の肩越しに窓の外を見下ろした。
「あ、2年C組のマナミちゃんだ。かわいー」
 窓のすぐ下で、2年生の女子たちがバレーボールで遊んでいる。マナミちゃんと言われても、鷹也にはどれが誰だかさっぱりわからない。たとえ下級生であっても、好みの女の子のチェックを怠らない親友に鷹也は呆れた。
「おまえは気楽でいいな」
 ため息混じりに皮肉ってやると、加納はおもしろそうに鷹也の顔を覗き込んでくる。
「お、なんだ? 恋煩いか? 受験生なのに余裕だねー」
「違うよ。兄貴の同居相手だった人のことを考えてたんだ」
「ああ、そういえば鷹也のお兄さん、彼女と一緒に暮らしてたんだっけ?」
 彼女ではないし、大学の友人でもなかったが、いちいち訂正するのも億劫なので、鷹也はそのまま話を進める。
「一緒に暮らしてた人間が、ある日、突然死んだら、どんな気持ちかなぁと思ってさ」
「そんなの、家族のおまえが一番よくわかってるだろ?」
「でも、兄貴が家を出てからは、あまり顔を合わせてなかったし……」
 たまに顔を合わせることがあっても、まともな会話をした記憶はほとんどなかった。ましてや、謙司の口から同居人の話を聞くことなど一度もなかった。男兄弟なんて、近いようでいて案外遠い存在なのかもしれない。
「もしや、兄貴の恋人に惚れちゃった? 兄貴の代わりに俺が幸せにしてやるーとか?」
 やはり間違いは速やかに訂正しておくべきだったかもしれない。
「そんなんじゃねぇよ。それに相手は……」
「でも、それって不毛じゃない?」
 加納は鷹也の言葉を遮って、勝手に話を続ける。
「どうあがいても死んじゃった人には勝てないでしょ」
 鷹也は虚を衝かれた顔で加納を見返した。
「あれ、違った? そういうことじゃないの?」
「……そういうこと?」
「だから、謙司さんの亡霊から彼女を奪いたいんだろ? 違うか?」
 夕暮れの道。幼い鷹也は、いつも謙司に手を引かれて歩く真紘の背中を見つめていた。
 悔しかった。
 振り返ってほしかった。
「ああ……多分そういうことなんだろうな」
 突然なにかがすとんと腹の底に落ちて、視界がクリアになった。最初から迷うことなどなにもなかったかのように。
 俺は兄貴から真紘を奪いたい。自分だけのものにしたい。
 それが本当の気持ち。否定のしようもない。
 しかし、そうなると今度は真紘との約束が重荷になってくる。
 謙司の遺骨を真紘に渡したらどうなるか。
 当然、真紘は謙司の遺骨を胸に抱き、出家した僧侶のごとく生きていくのだろう。
 それは鷹也にとって歓迎すべき事態ではないし、真紘にとっても決していいことだとは思えない。謙司の遺骨を真紘に渡すべきではないのではないか。
 けれど、あのときの真紘の顔を思い出すと、約束を反故にすることなどできない。
 真紘の望みを叶えてやりたい。
 ふたつに引き裂かれる心の痛みに、鷹也は奥歯を噛みしめた。
 
 
 その夜、両親が寝静まってから、鷹也は謙司の祭壇の前に立った。
 骨壷を納めてある桐箱の覆いをはずし、蓋を開けた。
 骨壷の上に乗っている埋葬許可書の入った白い封筒をよけると、円筒形の白い壷に手をかけた。
 ひんやりとした陶器の感触にどきっとする。
 静かに骨壷を取り出すと、鷹也は震える手で重みのある蓋をまわし開けた。





第10話につづく


にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
     
ランキングに参加しています。
お気に召しましたらポチッとお願いします。
1日1回のみカウントされます。
PR
■□ COMMENT
HN:
TITLE:
COLOR:
MAIL:
URL:  Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
COMMENT:
PASS:
■□ TRACKBACK
トラックバックURL:


■□ INFORMATION

【8/12】
誠に勝手ながら当ブログを
活動休止とさせていただきます。

【5/16】
すいません。
現在、潜伏中です。

【5/7】
突然ですが模様替えをしました。
慣れないうちはなにかとご不便を
おかけするかもしれませんが、
何卒ご容赦くださいませ。

【4/23】
「お久しぶりです」の方も
「はじめまして」の方も
こんな隅っこブログにお越しいただき
どうもありがとうございます。
ご挨拶が遅れてすみません…。
ぼちぼち更新してまいりますので
これからもよろしくお願いいたします。


【1/3】
あけましておめでとうございます。
昨年中はこんなぐだぐだなサイトを
見捨てずに応援してくださり
本当にありがとうございました。
今年もお付き合いいただけると
うれしいです♪
どうぞよろしくお願いいたします。


【11/3】
長らく放置してすいません><
こんな状況でも訪問してくださる方
本当にどうもありがとうございます!
ひとことでも感想などいただけると
朔田が泣いてよろこびます~。


【6/14】
ご無沙汰してます。本文の文字を
ちょっぴり大きくしてみました。
少しは読みやすくなったかな?


【4/21】
現在、ちょーゆるゆる更新中です。
忘れた頃になにかがアップされてる
…かも……?


【1/19】
「浅葱色の少年」は完結しました。
応援してくださったみなさま、
どうもありがとうございました!


【1/15】
新作「浅葱色の少年」を更新中です。
かすかにBLが薫るお伽噺みたいな?
楽しんでいただければ幸いです♪


【1/15】
趣味でやっていた〈ひとり光画部〉は
閉鎖しました。ご愛顧ありがとうござ
いました。


【1/15】
「石榴館」はすてき絵師・東風さんと
一緒に遊んでる吸血鬼シリーズです。
          詳しくはこちら→
石榴館 作品紹介

■□ COMMENTS
▼コメントありがとうございました!
[05/27 朔田]
[05/21 ままたみ]
[05/12 朔田]
[05/11 須和]
[05/11 ままたみ]
[05/10 須和]
[05/10 東風]
■□ PROFILE
管理人:朔田圭子(さくた けいこ)

さくたはめがねがだいすきだよ。それからかえるとかすなふきんとかみどりいろのものがすきみたい。 めーるふぉーむだよ♪ さくたがなんかゆってるww
■□ RANKING
▼ランキングに参加しています。お気に召しましたらポチッとしていただけると大変励みになります。    ※こちらは別窓が開きます。
にほんブログ村小説ブログBL小説ランキング    カテゴリ別オンライン小説ランキング

にほんブログ村トラコミュ[メガネくん萌え]
▲管理人をしています。メガネくん好きの方はぜひご参加ください♪
■□ SEARCH
忍者ブログ [PR]