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創作BL小説ブログ
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 休日はいつも、起きるとまず洗濯機をまわす。朝食を終えて台所を片付けると、洗濯物を干して部屋の掃除をする。昨日、仕事帰りに買い物を済ませてしまったので、あとはもうすることがない。
 謙司と暮らしていたころは時間を持て余すことなどなかったが、ひとりだとついぼうっとしてしまうことが多い。とくに鷹也が遊びにくる時間が近くなると、時計が気になってなにも手につかなくなってしまう。
 時計の針が2時半をまわった頃、ドアをノックする音が響いた。メールには3時ごろとあったのに、予定よりも少し早い。
「鷹也? 鍵は開いてるよ」
 いつもなら勝手に入ってくるのに、今日は違った。訝しく思いながら、真紘はドアを開けに立った。
「いらっしゃい」
 そう言ってドアを開けると、そこに立っていたのは鷹也ではなかった。
「朝美……」
 真紘よりも頭ひとつ分低いところから、眦の切れ上がった大きな目が睨みつけてくる。
「どうしたの? なんでここが……」
 朝美と呼ばれた少女は唇を真一文字に結んだまま、全身から怒りのオーラを放出していた。仕方なく部屋に招き入れると、朝美は躊躇せずに靴を脱いだ。
「そのへんに適当に座ってて」
 テーブルを出してある和室に通し、一言も発しようとしない朝美の様子を気にかけながら、真紘は薬缶を火にかけた。
「上着、脱いだら?」
 言われるままに上着を脱ぎ、脇に置く。
 朝美は真紘がいた施設の仲間で、真紘にとっては妹のようなものだった。少々気難しいところもあるけれど、明るく活発な少女で、誰よりも真紘を慕ってくれていた。大きくて真っ黒な瞳と厚めの唇が彼女の印象を幼く見せているが、現在高校1年生である。
「よくここがわかったね」
 真紘の問いかけに、朝美はようやく口を開いた。
「そんなの、ちょっと調べればすぐにわかるし」
 真紘は呆れた。
「また園長室に忍び込んだのか?」
 朝美には前科がある。親の居場所が知りたくて、夜中に園長室に忍び込んだことがあったのだ。機械に疎い園長は、子どもたちの個人的な情報を書類にして管理している。そのファイルを探し出そうとしたのだが、結局、ファイルを保管してある棚の鍵が見つからず、計画は失敗に終わった。しかし、朝美が園長室に侵入したことはすぐにばれて、翌日大目玉を食らった。
「もう園長室の鍵ならどんなのだって開けられるよ」
 朝美は悪びれずに言った。
 薬缶から噴き出る白い湯気を眺めながら、真紘は当時を思い出してくすりと笑った。
 マグカップにコーヒーを淹れ、鷹也のために買った砂糖とミルクを添えて出す。
「元気だった?」
 真紘がテーブルの向かい側に腰を下ろして訊ねると、朝美は再びきつい視線を真紘に向けた。けれど先程とは違い、そこには甘えの色が混じっている。
「……なんで会いにきてくれないの? 時々会いに来てくれるって約束したじゃん」
 たしかに施設を出るとき、そんな約束を交わした。この件に関しては、素直に謝るしかなかった。
「……すまない」
「半年もあたしを放ったらかしにして……。本当はあたしのことなんてどうでもいいんでしょ」
「そんなことはないよ。朝美のことは妹みたいに大切に思ってる」
 朝美は一瞬口を噤んでから、いっそう不機嫌な声で言った。
「タカヤって誰よ。部屋に来るくらいだからよっぽど仲がいいんだね」
「幼なじみだよ」
 朝美はぽってりとした唇を突き出した。
「嘘つき。園に入る前のことは憶えてないくせに」
「彼がおれのこと憶えていてくれたんだ」
「その人は真紘のことどのくらいわかってるの? その背中のことも知ってるの?」
 背中。
 そこには、真紘の秘密がある。
 施設の仲間はそれを知っているが、あそこの子どもたちは皆、大なり小なり秘密や傷痕を背負って生きている。自分の傷に触れてほしくないから、他人の傷にも目をつぶる。それが暗黙の了解になっていた。
「おれのことより朝美のことだよ。なにか用があったんだろう?」
「用がなきゃ来ちゃいけない?」
 真紘は自分に懐いてくれる朝美はかわいかった。が、そのストレートな物言いや、時折見せる真紘への執着心には、手を焼くことも多かった。
「そんなことはないけど……」
 朝美は苛立ったように、これまで何度も口にした言葉を繰り返す。
「けど、なんなのよ。だからあたしは何度も真紘を好きだって言ってるじゃない。妹としてじゃなくて、ちゃんとあたしを見て。あたしを真紘の特別にして」





第8話につづく


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■□ INFORMATION

【8/12】
誠に勝手ながら当ブログを
活動休止とさせていただきます。

【5/16】
すいません。
現在、潜伏中です。

【5/7】
突然ですが模様替えをしました。
慣れないうちはなにかとご不便を
おかけするかもしれませんが、
何卒ご容赦くださいませ。

【4/23】
「お久しぶりです」の方も
「はじめまして」の方も
こんな隅っこブログにお越しいただき
どうもありがとうございます。
ご挨拶が遅れてすみません…。
ぼちぼち更新してまいりますので
これからもよろしくお願いいたします。


【1/3】
あけましておめでとうございます。
昨年中はこんなぐだぐだなサイトを
見捨てずに応援してくださり
本当にありがとうございました。
今年もお付き合いいただけると
うれしいです♪
どうぞよろしくお願いいたします。


【11/3】
長らく放置してすいません><
こんな状況でも訪問してくださる方
本当にどうもありがとうございます!
ひとことでも感想などいただけると
朔田が泣いてよろこびます~。


【6/14】
ご無沙汰してます。本文の文字を
ちょっぴり大きくしてみました。
少しは読みやすくなったかな?


【4/21】
現在、ちょーゆるゆる更新中です。
忘れた頃になにかがアップされてる
…かも……?


【1/19】
「浅葱色の少年」は完結しました。
応援してくださったみなさま、
どうもありがとうございました!


【1/15】
新作「浅葱色の少年」を更新中です。
かすかにBLが薫るお伽噺みたいな?
楽しんでいただければ幸いです♪


【1/15】
趣味でやっていた〈ひとり光画部〉は
閉鎖しました。ご愛顧ありがとうござ
いました。


【1/15】
「石榴館」はすてき絵師・東風さんと
一緒に遊んでる吸血鬼シリーズです。
          詳しくはこちら→
石榴館 作品紹介

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管理人:朔田圭子(さくた けいこ)

さくたはめがねがだいすきだよ。それからかえるとかすなふきんとかみどりいろのものがすきみたい。 めーるふぉーむだよ♪ さくたがなんかゆってるww
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