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 夕飯の後片付けをするおれの背後で、呆れたように右京さんが言った。
「アサミってけっこう神経太いよね。普通、吸血鬼と一緒に住もうとか思う?」
 また住むところを失ってしまうのかと思ったら、咄嗟にここに置いてくれと懇願していた。彼らが吸血鬼だという事実よりも、住処を失うことのほうがおれには現実(リアル)だった。普通に考えたら吸血鬼と同居なんてあり得ない。
 っていうか、彼らは本当に吸血鬼なんだろうか。
 左京さんの食事風景を覗き見してしまったにもかかわらず、おれはまだ半分夢を見ているようだった。
「右京さん、そこは懐が深いとか器が大きいとか言ってくださいよ」
「ほら、どうしてそんなに落ち着いてかわいくない切り替えしができるの?」
 苦労してきたから……なんて不幸自慢するつもりはない。
「かわいくなくて結構です。生まれつきですよ」
 べつに怒っているわけではないのに、右京さんは僕の機嫌をとるように甘い声を作った。
「冗談だよ。アサミはかわいい。いま流行の草食系メガネ男子ってやつ?」
 どちらかと言ったら雑食なんだけど。
「そんな冗談を言ってる暇があるなら、少しは手伝ったらどうですか?」
 ちょっぴり皮肉を込めて言ってやると、彼は悪びれずに即答した。
「え~、やだよ。手が荒れる。それはアサミの仕事だろ?」
 はいはい、おれの手なんていくら荒れたってかまいませんよ。
「真面目な話さ、後ろに僕が立ってても全然怖くないの?」
「ええ。だって右京さんはおれなんか趣味じゃないでしょう?」
 最初の面通しのときのおれに対する評価はたいそう失礼なものだったけど、今は安心の材料となっている。
「それを言ったのはユージンと左京だよ。僕は趣味じゃないなんてひと言も言ってない」
「またぁ、おれを脅かそうとしても無駄ですよ」
 実際、右京さんが相手ならいくらでも逃げられると思う。こう言っちゃなんだけど、彼はきれいなだけでまったく強そうには見えない。
「本当だよ。こう見えても僕はあのふたりと違って雑食なんだ」
 その声はすぐ耳元で聞こえた。
 驚いて振り返ろうとした瞬間、背中から両腕も一緒に抱きしめられた。おれの泡だらけの手から皿が滑り落ち、ステンレスのたらいの中で皿が鳴った。
「あ、あの、右京さん? 冗談はやめてください」
 身を捩って抜け出そうとしても、右京さんの腕がびくともしない事実におれは驚き、焦った。彼を甘く見ていたことを後悔する。
「本当は僕にだって好みはある。僕はね、やさしそうな眼鏡のロマンスグレーが好きなんだ。長い年月を経て熟成された彼らの血には深い味わいがあってとても美味なんだよ。たとえるなら年代物のワインのように」
 ロマンスグレーということは男?
「なんで? 熟女じゃだめなんですか?」
「決まってるだろ。女より男の血のほうがおいしいからさ。生娘の血ならまだいくらかマシだけどね。それでも紳士の血とはまったくの別物さ」
 いや、どう考えても中年のおっさんよりも生娘の血のほうがおいしそうだし。
「でも、理想的な紳士にはなかなか巡り会えないから、手近なところで我慢してるんだよ」
 それから右京さんは「ふふ」と色っぽく笑った。
「アサミが歳をとったら、きっとおいしいだろうなぁ」
「え……おれ?」
 さっと血の気が引いていく。
「ねえ、先に少しだけ味見させてよ」
 耳朶を噛むほどに近づいた唇から、甘えるような囁きが直接耳に吹き込まれる。
 思わず頷きそうになりながらも、おれは必死に抵抗する。
「や……やめてください、右京さん」
「いいじゃん。今からアサミを予約しておきたい」
 逃げられないおれの首筋に、右京さんの息がかかった。ぞくりと背筋が粟立つ。
「や……っ」
 ぎゅっと目を瞑った瞬間、背後で地を這うような声が響いた。
「そのへんにしておけ、右京」
「あ、左京」
 左京さん?
 おれは反射的に振り返った。キッチンの入口に、怖い顔で腕組みをした左京さんが立っていた。
「せっかく決まった家政夫にまた逃げられたらどうするんだ」
「ちぇっ、いいところだったのに」
 右京さんはあっさりとおれの身体を解放し、そそくさとキッチンから出ていってしまった。
 その背中を見送ると、左京さんが冷ややかな目でおれを見下ろしてくる。
「おまえも少しは用心しろ。トロいやつだな」
 その言いぐさにおれはムカッときた。
「だっておれは趣味じゃないんだろ! どうでもいいんだろ! そう言ってたじゃないか!」
 悔し紛れにがちゃがちゃと皿洗いを再開する。
 そのとき、指先に鋭い痛みが走った。
「痛っ」
「どうした?」
 見ると、人差し指についた泡が見る見る赤く染まっていく。
「さっき落とした皿が欠けてたのかも」
 水道水で泡を流すと、指先の傷から再びじわりと血が滲んできた。
 とりあえず手を拭いて絆創膏でも張っておこうと、タオルに手を伸ばしたところを左京さんのきれいな手に掴まれた。
 あっ、と思ったときには、おれの人差し指は彼の口に含まれていた。
 熱い舌の感触に、身体の内側がざわざわと波立つ。
 左京さんはただ手当てのためにおれの傷口を舐めているだけだ。
 そう思おうとしても、妙に気分が落ち着かない。
 その間も左京さんは熱心におれの人差し指を舐めている。
 あの左京さんが……。
 目の前の信じがたい光景に顔がカッと熱くなり、おれは堪らず彼に声をかけた。
「あ、あの……もう大丈夫だから……」
 すると左京さんは弾かれたようにおれの指から顔を離した。
「あ……」
 顔を背ける直前に見えた彼の瞳は、あの晩のように美しい石榴色だった。
「左京さん……」
 まるでおれから逃げるように、左京さんはキッチンから立ち去った。





目次へ2 「家政夫は見た」 へ





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誠に勝手ながら当ブログを
活動休止とさせていただきます。

【5/16】
すいません。
現在、潜伏中です。

【5/7】
突然ですが模様替えをしました。
慣れないうちはなにかとご不便を
おかけするかもしれませんが、
何卒ご容赦くださいませ。

【4/23】
「お久しぶりです」の方も
「はじめまして」の方も
こんな隅っこブログにお越しいただき
どうもありがとうございます。
ご挨拶が遅れてすみません…。
ぼちぼち更新してまいりますので
これからもよろしくお願いいたします。


【1/3】
あけましておめでとうございます。
昨年中はこんなぐだぐだなサイトを
見捨てずに応援してくださり
本当にありがとうございました。
今年もお付き合いいただけると
うれしいです♪
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【11/3】
長らく放置してすいません><
こんな状況でも訪問してくださる方
本当にどうもありがとうございます!
ひとことでも感想などいただけると
朔田が泣いてよろこびます~。


【6/14】
ご無沙汰してます。本文の文字を
ちょっぴり大きくしてみました。
少しは読みやすくなったかな?


【4/21】
現在、ちょーゆるゆる更新中です。
忘れた頃になにかがアップされてる
…かも……?


【1/19】
「浅葱色の少年」は完結しました。
応援してくださったみなさま、
どうもありがとうございました!


【1/15】
新作「浅葱色の少年」を更新中です。
かすかにBLが薫るお伽噺みたいな?
楽しんでいただければ幸いです♪


【1/15】
趣味でやっていた〈ひとり光画部〉は
閉鎖しました。ご愛顧ありがとうござ
いました。


【1/15】
「石榴館」はすてき絵師・東風さんと
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管理人:朔田圭子(さくた けいこ)

さくたはめがねがだいすきだよ。それからかえるとかすなふきんとかみどりいろのものがすきみたい。 めーるふぉーむだよ♪ さくたがなんかゆってるww
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