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創作BL小説ブログ
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 またふたりきりになった。
 さっきとは立場が逆だけれど。
 最初は中原が踏み込んで、今度は柳田が飛び込んできた。自分たちはなにをやっているのだろうと思うと滑稽で、少しだけ醒めた。
「なにか用か?」
 訊ねながらパイプ椅子を開き、ドアの前で突っ立っている柳田に勧める。柳田はちょっと迷った様子を見せてから、大人しくそれに座った。
「あの人、あんたのことが好きなんだね」
 あの人というのは、もしかしなくても上嶋のことだろう。
「まさか。それはないよ」
「あんたって案外鈍いよな。そういうとこむかつく」
 思春期の子どもが大人にむかつくのはデフォルトだ。中原は軽く聞き流す。
「そんなこと言いに来たのか?」
 しばしの沈黙のあと、柳田は顔を俯けたまま言いにくそうに口を開いた。
「沢が転校してから、おれたちよく電話で話するようになったんだけど」
 ああ、あいつが腹をくくれと言ったのはこのことか、と中原は思った。
「あいつ、高知に遊びに来ないかって言うから、来月の連休に行くことにした」
 こんな話を聞かされるのなら、兄貴分を気どるんじゃなかったと後悔する。
「そうか、よかったな」
 つい口調がぞんざいになってしまう。本当なら笑顔でよろこんでやらなければならないところなのに、自分の不機嫌さを隠せない。
 柳田の訝しげな視線が中原を刺す。
「……なんか誤解してるだろ」
 中原はその視線を避けるように身体ごと横を向く。つい癖で胸のポケットを探るが、思い直して手を下ろした。それからなるべく投げやりに聞こえないように注意して声をつくる。
「誤解もなにも、沢とうまくいってるんだろ? おまえの想いが通じてよかったじゃないか。これで俺もお役御免だな」
 けれど柳田は中原の声に含まれる微妙な違和感を察知した。
「なに怒ってんだよ」
「怒ってないよ。ほっとしてるんだ」
 それは半分本当だった。柳田が沢と恋仲になれば、自分はまた安全な場所に帰れる。自己防衛の本能が、中原に逃げ道を用意させる。
「まただ……」
 その声には怒りと悲しみが滲んでいた。
「あんたはまたそうやっておれを突き放そうとする。なんでも相談に乗るからって言っときながら少しもおれを見てない。だったら最初からやさしくなんかするなよっ」
 本当に子どもはよく大人を見ている。中原はずれてもいない眼鏡を押さえて呟いた。
「はは……参ったな」
 力なく笑うと、柳田が苛立った声で言った。
「なんでそんな自分ばっかり傷ついたような顔するんだ。ずるいじゃん。おれだって傷ついてんだ」
「どうして……」
「どうして? それくらい自分で考えろよ。大人だろ。全部おれに言わせる気かよ」
 自分を見ていない、突き放そうとしている、と言って傷ついた顔を見せる柳田。
 中原はようやく彼の言わんとしていることを理解した。
「え……でも、まさか……おまえが好きなのは沢だろう?」
「たしかに好きだったよ。でも、そのことに気づいたときにはもう……」
 柳田は落ち着きを取り戻し、手元を見つめながら訥々と語り始めた。
「沢とはこうして離れ離れになって、初めてお互いのことを話すようになって……やっとおれが最初に望んでたような友だちになれたんだ」
 柳田が顔を上げる。
「中原さん……あんたのおかげだよ。あんたがそばにいてくれたから、おれは自棄にならずにちゃんと沢と向き合うことができたんだ」
 暗褐色の澄んだ瞳が、まるで中原の心を見透かすように見つめてくる。
「ねえ、おれが沢と納得のいく関係を築けるまで見守っててくれるって、前に約束したよね。沢とおれは親友。おれはこの結果に納得してるよ。で、これからどうなるの? 俺たちの関係はこれで終わり? ただの司書と生徒に戻るの?」
 中原は焦った。
「待て。よく考えろよ。おまえはこれからいろんな出会いをして、普通に女の子とも付き合ったりするかもしれない。今から道を踏み外したりすることはないんだ」
「まだ出会ってない相手のことなんて考えたって仕方ない。おれはあんたと出会ったんだ。これがおれの正道なんだ」
 強くまっすぐな瞳に畏怖を抱き、中原は思わず視線を逸らした。
「それでも俺は怖いよ」
「自分のことが? それともおれのために怖がってるの?」
「両方だ」
「だったら半分にしてやる」
 柳田は明るい声で言った。
「あんたはおれのために怖がらなくていいよ。おれはちっとも怖くなんかないんだから」
 少しはにかんだように柳田が笑う。
 愛しくて堪らなかった。こんなに健気な生きものを、中原はほかに知らなかった。かわいくて、愛しくて、無性に泣けてきそうになる。
 上嶋が腹をくくれと言ったのはこっちの意味だったのだろうと、今更ながらに気づく。
 16歳の彼が答えを出したのに、いい大人の自分が臆病風に吹かれているわけにはいかない。道のりは困難だろうし、ゴールなんてものはきっとないのだろう。それでも、この一歩はあらゆるリスクを背負ってでも踏み出す価値のある一歩だ。
 中原は覚悟を決めて手を伸ばした。そっと握ったそれは、紛れもなく男の手だ。骨っぽくて、子どものように温かい、愛すべき少年の手だ。
 一度掴んでしまえば、きっともう放せなくなるだろうという予感はあった。
 きゅっと下唇を噛んでいる柳田の顔を見つめて、中原はやさしく囁いた。
「おいで、十哉」





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今日は遅くなりました。っていうか終わらんかった…。
次で完結です。…のはずです。

それから、私は記事をアップしてからもちょこちょこ文章を直してます。
なぜかウェブ上に上げてからでないと気づかない間違いや
細かい言いまわしの違和感などがあるのです。
だから、運悪くアップ直後に読んでしまった方には申し訳ないです。ごめんなさい。

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15日のCさま♪

拍手コメありがとう!
そうなの。向こうはほったらかしだったから小説やめて日記にしちゃった。
ここの雑記に書くほどのことでもないどうでもいいことを
ぶつぶつ呟いていこうと思います(笑)。
これからどうぞよろしくね♪
朔田 2009/05/16 15:41 *edit
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現在、潜伏中です。

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慣れないうちはなにかとご不便を
おかけするかもしれませんが、
何卒ご容赦くださいませ。

【4/23】
「お久しぶりです」の方も
「はじめまして」の方も
こんな隅っこブログにお越しいただき
どうもありがとうございます。
ご挨拶が遅れてすみません…。
ぼちぼち更新してまいりますので
これからもよろしくお願いいたします。


【1/3】
あけましておめでとうございます。
昨年中はこんなぐだぐだなサイトを
見捨てずに応援してくださり
本当にありがとうございました。
今年もお付き合いいただけると
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【11/3】
長らく放置してすいません><
こんな状況でも訪問してくださる方
本当にどうもありがとうございます!
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朔田が泣いてよろこびます~。


【6/14】
ご無沙汰してます。本文の文字を
ちょっぴり大きくしてみました。
少しは読みやすくなったかな?


【4/21】
現在、ちょーゆるゆる更新中です。
忘れた頃になにかがアップされてる
…かも……?


【1/19】
「浅葱色の少年」は完結しました。
応援してくださったみなさま、
どうもありがとうございました!


【1/15】
新作「浅葱色の少年」を更新中です。
かすかにBLが薫るお伽噺みたいな?
楽しんでいただければ幸いです♪


【1/15】
趣味でやっていた〈ひとり光画部〉は
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