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創作BL小説ブログ
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 柳田は沢に恋をしていた。
 ただ、相手は一番仲のいい友人だったため、柳田は自分の気持ちを友情だと思い込んだまま、歪んだ独占欲を募らせていった。
 はっきり言って、恋に無自覚で不安定な高校生を落とすことなんて簡単だった。
 けれど中原はそうしなかった。ずるい大人のやり方で柳田に手を出すことは躊躇われた。
 いや、実際は堪えきれずに1度だけキスしてしまったのだが、中原を兄のように慕ってくる無垢な彼に自分の身勝手な感情を押し付けてはならないと思い直したのだ。
 たとえ自分にとって不本意な結果に至ったとしても、彼が自ら答えを見つけるまで見守ろう。
 中原はそう心に決めた。
 しかし、肝心の沢は夏休みの間に転校してしまった。家庭の事情で母親の実家がある高知へ引っ越したのだ。
 別れ際、柳田が沢にどんな言葉をかけたのかはわからない。
「やっとわかった。おれ……沢が好きだったんだ」
 柳田がそう中原に打ち明けたのは、沢が去った直後のことだった。
 とうとうこのときがきたか。
 中原は胸の痛みとともに彼の成長を見届けた。
 その後、沢との関係がどうなっているのか、柳田はなにも話さない。けれど、彼が度々携帯電話でメールのやり取りをしている相手が沢だということに中原は気づいている。
 柳田が卒業するまで、俺は頼れる兄貴分としてあいつの恋を見守っていかなきゃならないのか。
 そう思うと愚痴のひとつも溢したくなる。
「あーあ、失敗した。思春期のガキなんて面倒くさいだけだな」
 第一、柳田は男だ。中原は今まで女性としか付き合ったことのない至ってノーマルな男で、同性に対して愛情のようなものを抱いたのは柳田が初めてだった。
 きっとこの環境のせいだ。一時の気の迷いだ。むしろこの想いが成就しなくてよかったんだ。こんなの俺の柄じゃない。
 そう思おうとすればするほど虚しくなってきて、中原は無造作にウェーブした茶色の髪をくしゃくしゃと掻き毟った。
 そのとき、背後で扉の開く音がした。
 驚いて振り返ると、そこに立っていたのは柳田だった。
「十哉……帰ったんじゃなかったのか? 忘れ物か?」
「あ、また煙草吸ってる」
 中原はポケットから携帯灰皿を取り出して煙草の火を揉み消した。それから大人の余裕を見せるべく、頼れる兄貴風の微笑を浮かべた。
「どうした? またなにか悩み事か?」
 柳田は自分の爪先を見つめながら、言いにくそうにぼそりと呟いた。
「最近……おれのこと避けてるだろ」
 大人にとって勘のいい子どもほど厄介なものはない。
 まあ、この年頃の子どもは総じて自分に向けられる好意や悪意には敏感なものだが、と中原はひとり納得する。
「そんなことないよ。おまえの考えすぎ」
 柳田はすっかり中原を信用している。ほどよい距離を保っておかないとまたいつかのように柳田に手を出してしまいそうだから、とは口が裂けても言えない。
 なおも思いつめたような声で柳田が訊ねてくる。
「あのさ、さっき話してた中原さんの好きな人って……」
 言いかけたそのとき、入口の扉のノブがガチャリと鳴った。
「佳人、待ちに待った金曜日だぞ。帰りにいつものとこ……あれ、まだ生徒が残ってたのか」
 現れたのは理事長の息子で英語教師の上嶋だった。
 彼は中原の大学時代の悪友だ。希望していたところに司書の空きがなく、仕方なく始めた塾の講師で満足しかけていた中原に、うちで司書をやらないかと話を持ちかけてきたのが上嶋だった。これで大学時代の借りを返せる、と言って笑う上嶋の好意を中原はありがたく受け取った。以来、ふたりの付き合いは大学時代の延長のように続いている。
 察しのいい上嶋が意味ありげに口端を持ち上げた。
「もしかしてお邪魔だった?」
 中原は上嶋がなにか余計なことを言い出すのではないかと、内心冷や冷やする。
「いや、もう用は済んだよ」
 中原の言葉に不服そうな顔を見せながらも、柳田は黙って踵を返した。
「気をつけて帰れよ」
 扉の閉まる音が荒々しく響いたあと、上嶋が呆れたように言った。
「おまえはひどい男だな。彼、泣きそうな顔してたよ」
「あいつはそんなんじゃないよ」
「べつに生徒に手を出したからって親父に密告したりはしないよ。俺も他人のことをとやかく言えないし」
 上嶋はうれしそうに中原の肩に腕をまわしてきた。
「でもまさかノンケのおまえが男子生徒をねぇ」
「だからそんなんじゃないって。てめえと一緒にするな」
 上嶋はバイである。老若男女関係なく、そのとき心が動いた相手を口説く自由人だ。
「べつにいいじゃん。郷に入りては郷に従えっていうだろ?」
「どんな郷だよ。親父さんの学校で問題起こすなよな。ただでさえほかの教師たちに煙たがられてるんだから」
「心配してくれるのか? さすが我が心の友!」
「バカ。おまえがここを追い出されたら俺の首も危ないからだ」
 上嶋が吊るし上げを食らったら、彼の口利きでここの司書をやっている中原のプライベートまで芋蔓式に掘り返されるかもしれない。中原には上嶋のように晒されて困るほどの過去はないが、上嶋に付き合ってその手の人間が集まるバーに出入りしていることが明るみに出ると面倒だ。なるべくなら波風を立てたくない。
「で、うまく話を逸らそうとしている司書さん。さっきの生徒はなんなの?」
 中原は内心で舌打ちした。
「本当になんでもないよ。悩み事の相談を受けてただけだ」
 上嶋はまるで信用していない目つきで中原を眺めた。
「へえ、そうなの? じゃあ、俺があの子を口説いても問題ない?」
 その言葉に中原はカッとなった。
「問題大ありだろ! おまえは教師なんだぞ!」
「あはは、冗談に決まってるだろ」
 上嶋が言うとまるで冗談に聞こえない。中原は再度念を押す。
「本当にあいつには手を出すなよ」
「大丈夫。あんな普通な子、俺の趣味じゃないよ」
 そう言われると、それはそれでおもしろくないと思ってしまう中原だった。





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本編を読み返しながら書いてるんですけど……あまりのイタさに全部削除したくなります。
でも本編がなくちゃ番外編にならないからぐっと我慢。
それにしても、毎度のことなが季節感を丸っと無視してます(笑)。

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お久しぶりです(感涙…)
こんにちは、お元気そうでなによりです!
本当に久々で、そうしたら中原さんがいるし、キャッ!!
大人が子どもに相手に悶々としている姿は、いいですねぇ~。
うんと振り回されるといいわっ♪ いっそ、振られてもよいくらい!あっ、そりゃダメか(笑)
中原さんの絵、とっても素敵! 最初は勝手に想像して読んでいたのに、前回の中原さんのお姿にもう自分がどんな中原さんを思い描いていたかさえ、わかんなくなっちゃた。前回の目を瞑った中原さんもよかったけど、今回の目を開いた中原さんにますます妄想逞しくしてしまいましたわ。
続きとぉっても楽しみにしてるわよん☆

追伸…そんなこと書いちゃうとまたまた本編じっくり読みたくなっちゃうよぉ(笑) 朔田さん、変なとこMだねぇ、うふふ。。。あっ、ショートショートの「彼氏」も読まなくっちゃだわ♪(←ザ・ストーカー) このお話には萌えて萌えて萌死んだわよ。
六花 2009/05/11 10:46 *edit
お久しぶり~!
会いたかったよ~。六花さんも元気だった?

>本当に久々で、そうしたら中原さんがいるし、キャッ!!
↑そうなの。思いがけず戻ってまいりました。
本編は中途半端な終わり方してるから、いつか続きを書きたいとは思ってたんだけど、
今までなかなか書けないでいたのよね~。

>大人が子どもに相手に悶々としている姿は、いいですねぇ~。
↑いいよね~。年の差大好きよ。
それにしても「振られても…」って六花さんどんだけSなんだ(笑)。
いや~、相変わらずでうれしいわ~♪

>中原さんの絵、とっても素敵!
↑あっ、見てくれた? あの目いいよね。なんか話しかけられてる感じする。
私も東風さんのあの絵のおかげでまた中原書けるようになったんだもん。
六花さんもぜひあの中原をイメージして読んでね♪

>☆ 追伸…そんなこと書いちゃうとまたまた本編じっくり読みたくなっちゃうよぉ(笑)朔田さん、変なとこMだねぇ、うふふ。。。
↑あ、また…。そういえば六花さんはそういう人だったわね(笑)。
「彼氏」って書いた私もすっかり忘れてたよ。どんなんだっけ?と思って
いま読み返してみたら、脱字を1カ所見つけた…。
六花さん、いつもありがとう…(泣き笑い)。
朔田圭子 2009/05/11 13:50
拍手レス♪
11日のRさま♪

ぱちぱちありがとうございます!
現在、写真は5点あります。
ときどき内容を入れ替える予定ですので、
またしばらくしたら覗いてみてくださいね。
朔田 2009/05/12 07:48 *edit
のんk・・・・・
しまった書き込む順序逆になっちゃったゴメン
(゜Д ゜)中原さんノンケだったんだね。。。。。見落としてたorz
てことはむしろ十哉くんのほうが才能的にはガチってことかしr(←

>六花さまへ!
はじめまして、東風と申します^^
イラストを観ていただいてとても嬉しかったです!
皆さまのイメージのお邪魔にならないことを祈りつつ・・・スイマセン(*´∇`*);;
ありがとうございました^^


>朔田さん
ごめん、横レスもしかダメだったらさくっと削除してね!


東風 URL 2009/05/12 15:13 *edit
わは、
>(゜Д ゜)中原さんノンケだったんだね。。。。。
↑今まではっきり書かなかったからね~。
十哉のほうは恋愛経験自体があんまりないから、
一度足を踏み入れちゃったらずるずると深みにはまっちゃうかもなぁ。
中原、責任重大だ。

>ごめん、横レスもしかダメだったらさくっと削除してね!
↑無問題! うちに遊びにきてくれる人たちが仲よくなってくれるのは
私もうれしいよ♪
朔田圭子 2009/05/12 16:57
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■□ INFORMATION

【8/12】
誠に勝手ながら当ブログを
活動休止とさせていただきます。

【5/16】
すいません。
現在、潜伏中です。

【5/7】
突然ですが模様替えをしました。
慣れないうちはなにかとご不便を
おかけするかもしれませんが、
何卒ご容赦くださいませ。

【4/23】
「お久しぶりです」の方も
「はじめまして」の方も
こんな隅っこブログにお越しいただき
どうもありがとうございます。
ご挨拶が遅れてすみません…。
ぼちぼち更新してまいりますので
これからもよろしくお願いいたします。


【1/3】
あけましておめでとうございます。
昨年中はこんなぐだぐだなサイトを
見捨てずに応援してくださり
本当にありがとうございました。
今年もお付き合いいただけると
うれしいです♪
どうぞよろしくお願いいたします。


【11/3】
長らく放置してすいません><
こんな状況でも訪問してくださる方
本当にどうもありがとうございます!
ひとことでも感想などいただけると
朔田が泣いてよろこびます~。


【6/14】
ご無沙汰してます。本文の文字を
ちょっぴり大きくしてみました。
少しは読みやすくなったかな?


【4/21】
現在、ちょーゆるゆる更新中です。
忘れた頃になにかがアップされてる
…かも……?


【1/19】
「浅葱色の少年」は完結しました。
応援してくださったみなさま、
どうもありがとうございました!


【1/15】
新作「浅葱色の少年」を更新中です。
かすかにBLが薫るお伽噺みたいな?
楽しんでいただければ幸いです♪


【1/15】
趣味でやっていた〈ひとり光画部〉は
閉鎖しました。ご愛顧ありがとうござ
いました。


【1/15】
「石榴館」はすてき絵師・東風さんと
一緒に遊んでる吸血鬼シリーズです。
          詳しくはこちら→
石榴館 作品紹介

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管理人:朔田圭子(さくた けいこ)

さくたはめがねがだいすきだよ。それからかえるとかすなふきんとかみどりいろのものがすきみたい。 めーるふぉーむだよ♪ さくたがなんかゆってるww
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