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創作BL小説ブログ
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「ちーっす」
 扉を開けると、図書室独特の匂いにほっとする。
 すっかり図書室の馴染み客になった一威は、神谷に挨拶をしながらカウンターの前を通り過ぎ、窓際の席で本を読む中也のもとへ直行した。
「お待たせ」
 今日は中也と神保町に寄る約束をしていた。掃除当番の一威は、中也を待たせてはいけないと速攻で役目を終えてきたのだが、当の本人は読書に夢中で、一威の声もその耳には届いていないようだった。
 しかしこれはいつものことで、中也のまわりの人間は皆すっかり慣れている。一威も諦めて向かいの席に腰を落ち着けることにした。
「この調子じゃ、まだ当分はこっちには戻ってこないぞ」
 神谷が本の山を抱えながら、隣の大机に移動してきた。どうやら新しく受け入れる本に、ブッカーと呼ばれる透明の保護フィルムを貼る任務を与えられたらしい。一威も何度か手伝ったことがあったが、油断すると本の表紙とフィルムの間に空気が入ってしまい、仕上がりがなかなかきれいにいかないのだ。
 続いて中原も本を抱えてやってきた。すかさず手持ち無沙汰に座っている一威に目をつける。
「お、こんなところにヒマそうなヤツがいるぞ。おまえもブッカー貼り手伝えよ」
「げっ」
 思わず腰を浮かして逃げの体勢に入る。
「そうだよ。今日はブッカー部隊が全然集まらないんだから」
 神谷が憮然とした表情で愚痴を漏らした。
 ここにいる以上、なにもせずに傍観しているわけにもいかず、一威は渋々立ち上がり、本が山積みにされている隣の机に移った。
「じゃあ、任せたよ」
 そう言うと、中原は本のデータの打ち込み作業をしに司書室へ戻っていった。
 あのとき中原は、一威と中也がキスするのを見ていたかもしれない。仮に見ていなかったとしても、ふたりがどういう状況だったのか、おおよその検討はついているだろう。それでもなにも言ってこないということは、ふたりの関係に目をつぶってくれているということなのか。
 しかし、関係もなにも、あれから一週間が経過するのに、一威と中也の間にこれといった変化はない。中也は相変わらずマイペースな本の虫で、一威は中也が薦めるままに本を読み続けている。
 唯一変わったことといえば、ふたりきりのときに一威が中也をナカヤと呼ぶようになったことくらいだ。そのときの、わざとぶっきら棒な返事で照れ隠しをしつつも、首筋まで桜色に染める中也の初心な反応だけで、今のところ一威は満足している。
 少しずつ、ゆっくりでいいのだ。中也の傍らで、こうして読書に耽る彼の顔を眺めながら、図書委員にいいように扱き使われるのも悪くない。
()「おい、のんびりやってると今日中に終わらないぞ」
 一威の手元を見ながら神谷が急かしてくる。
「のんびりじゃなくて丁寧と言ってくれ」
 最初のうちは黙々と手を動かしていた神谷だったが、作業に慣れてくると今度は口数が増えてくる。
「おまえ、よく続いてるな」
「なにが?」
 中也も本の大きさに合わせてフィルムをカットしながら、神谷のおしゃべりに付き合う。
「図書室通い。べつに読書が好きってわけでもなかっただろ? 正直、意外だよ」
「まあ、これといって趣味もなかったし、ヒマだったからね」
「その趣味探しのほうはどうなった? もしかして中也の目論見どおり読書とか?」
「目論見どおり?」
 それは初耳だった。
 中也が読書の指南をしてくれていたのは一威が頼んだからであって、中也の意思ではないと思っていた。
「ああ。あいつは人を自分の趣味に染めるのが楽しみなんだ。だから素直そうなヤツを見つけると、せっせと自分の好きな作家や小説を薦めるんだよ。おまえは素質ゼロだと思ってたけど、案外読書は向いてたんだな。これで『趣味は読書です』って堂々と言えるんじゃない?」
 一威はちょっと考えた。
「読書というより図書室通いかな。それと……桐原中也」
 ぷっと神谷は吹き出した。
「変わった趣味だな。まあ、中也は観察するにはおもしろいかもしれないけど」
「ん? 呼んだか?」
 自分が話題に上っていることに気づいた中也が、ようやく本から顔を上げた。それから、さして驚きもせずに言う。
「あ、佐島も来てたのか」
 それに呆れた顔をしたのは神谷だった。手が塞がっているため、顎で中也を指す。
「佐島、こんなんだよ?」
 一威は晴れやかな笑顔で頷いた。
「いいんだ、こんなんで」





END



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こんにちは~~。
遊びに来ちゃいました。
どのタイトルも魅かれる要素があるんですが、まずは「図書館」!
面白かったです~~~。
中也センパイが可愛いです。司書の先生も素敵。
また遊びに来ます!
おふく 2008/10/08 21:54 *edit
わあ、おふくさん!
わざわざこんなところにおいでいただきまして
どうもありがとうございます。
おふくさんが読んでくださったのかと思うと
なんだか緊張してしまいます~。

こんな地味なところでよろしければ
いつでも遊びにきてください。
私もそちらにお伺いしますね♪
朔田圭子 2008/10/09 09:23
拍手レス♪
30日 22:32のSさま♪
拍手&メッセージありがとうございます^^
うきゃ! そう何度も読み返されちゃうとボロがぁ~!
でも気に入っていただけてうれしいです♪
とくにメガネくん(笑
同じ眼鏡好きに認めてもらえるのはすごくうれしいです。
あの図書室は私が通ってた女子校の図書室がモデルなんですよ。
だいぶ前にすべての校舎が新しく建て直されて、
もうあの図書室はなくなっちゃったんですけどね。
新しいものを作るより古いものを残すほうが何倍も難しいものなんでしょうね。
ほんと寂しいですよ~。

更新がないのに、古い作品を読みにきていただけて
本当にありがたいです。感謝です!
朔田 2009/10/31 01:02 *edit
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【8/12】
誠に勝手ながら当ブログを
活動休止とさせていただきます。

【5/16】
すいません。
現在、潜伏中です。

【5/7】
突然ですが模様替えをしました。
慣れないうちはなにかとご不便を
おかけするかもしれませんが、
何卒ご容赦くださいませ。

【4/23】
「お久しぶりです」の方も
「はじめまして」の方も
こんな隅っこブログにお越しいただき
どうもありがとうございます。
ご挨拶が遅れてすみません…。
ぼちぼち更新してまいりますので
これからもよろしくお願いいたします。


【1/3】
あけましておめでとうございます。
昨年中はこんなぐだぐだなサイトを
見捨てずに応援してくださり
本当にありがとうございました。
今年もお付き合いいただけると
うれしいです♪
どうぞよろしくお願いいたします。


【11/3】
長らく放置してすいません><
こんな状況でも訪問してくださる方
本当にどうもありがとうございます!
ひとことでも感想などいただけると
朔田が泣いてよろこびます~。


【6/14】
ご無沙汰してます。本文の文字を
ちょっぴり大きくしてみました。
少しは読みやすくなったかな?


【4/21】
現在、ちょーゆるゆる更新中です。
忘れた頃になにかがアップされてる
…かも……?


【1/19】
「浅葱色の少年」は完結しました。
応援してくださったみなさま、
どうもありがとうございました!


【1/15】
新作「浅葱色の少年」を更新中です。
かすかにBLが薫るお伽噺みたいな?
楽しんでいただければ幸いです♪


【1/15】
趣味でやっていた〈ひとり光画部〉は
閉鎖しました。ご愛顧ありがとうござ
いました。


【1/15】
「石榴館」はすてき絵師・東風さんと
一緒に遊んでる吸血鬼シリーズです。
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管理人:朔田圭子(さくた けいこ)

さくたはめがねがだいすきだよ。それからかえるとかすなふきんとかみどりいろのものがすきみたい。 めーるふぉーむだよ♪ さくたがなんかゆってるww
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