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創作BL小説ブログ
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 うちの高校の図書室はちょっと変わった造りをしている。クラシックというか和風モダンというか、古いミステリ小説に出てきそうな凝った意匠で、天井が高く、ロフトのような中2階がある。
 その2階の一番奥の文学全集が並んでいる書架。そこがひとりきりになりたいときのおれの指定席だ。下の閲覧スペースからは死角になって見えないし、こんなところにやってくる人間はまずいない。
「あー、やっぱりここにいたんだね」
 ここにひとりいた。物好きなヤツが。
「今日はどうして下にいないの? 本を読むならあっちのほうが明るいじゃん。目、悪くするよ」
 おれは左の中指で眼鏡のブリッジを押し上げた。
「もうとっくに悪い」
「だから、さらに悪くなっちゃうよって言ってんですよ、中也先輩」
 こいつ、佐島一威はおれの1コ下で、どういうわけかおれのことが好きだという。
「ねえ、先輩。休み時間に送ったメール見てくれた?」
 おれはこいつの強い勧めで、最近になって携帯電話を所持するようになったばかりだ。電話は苦手だから、連絡はもっぱらメールを利用している。けれど、このメールというやつもあまり好きになれない。相手の顔が見えないやり取りは、基本的になんでも苦手なのだ。
「……見てない」
 嘘だ。本当は読んだ。速攻で読んだ。
「なんだ、そっか。どうして返信くれないのかな~と思ってたんだけど、やっぱり読んでなかったのか」
 そう言って、佐島はさみしげな表情を見せた。その姿は飼い主に置いていかれた大型犬のようで、おれは胸の奥がきゅっとなった。
「じゃあ、今日がなんの日かもわかってないよね」
 それは知っている。けっこう前から知っている。でも、さっきメールを見ていないと答えてしまった手前、今日がなんの日か知っていることを佐島に知られること自体がもう耐えられない。
「先輩……、あんたにとって俺はなんですか?」
「なにって……」
 実は、佐島とは以前に1度だけキスをした。今更ただの後輩だと言い逃れるつもりはない。ただ、おれたちの関係を言葉で表すのにはどうしても抵抗があった。
「俺は、その……先輩の彼氏のつもりなんだけど、先輩にとって俺はまだただの後輩のままなのかな……」
 そのセリフにおれは腹が立った。おれはなんとか自分の気持ちに折り合いをつけようと努力しているのに、こいつは少しもおれを信用していない。そう思うと、悔しいやら情けないやらで泣きたくなった。
「おまえはもう少しおれのことをわかってくれるヤツだと思ってた。けど、おまえがそんなんなら、おれにも考えがある」
 その言葉をどう受け取ったのか、佐島がすごい顔をした。泣いているような怒っているような複雑な表情で迫ってきて、俺はあっという間に奥の壁際まで追い詰められた。
「おい、佐島?」
 こいつ、絶対なにか誤解している。
「うるさい。あんたの考えなんか聞かない。聞きたくない」
 次の瞬間、佐島の長い腕がおれの身体を拘束し、知っている唇がおれの唇を塞いだ。
「ん……っ」
 突然の展開に驚き、俺は佐島の腕から逃れようともがいた。けれど書架と壁のコーナーに押し込められ、思うように身動きがとれない。悔しくて涙が出そうになるのを必死で堪え、俺は佐島の唇に歯を立てた。
「いてっ」
 反射的に顔を離した佐島の唇には、赤い血が滲んでいた。
 けれど、俺は謝ってなんかやらない。悪いのはこいつのほうだ。
「そうやって無理やり力で捩じ伏せて……おれの気持ちはお構いなしか? それでおまえは満足なのか?」
「満足なわけがないだろっ。俺はあんたの心ごと、あんたの全部がほしいんだっ」
 佐島が俺の制服の胸を掴んで、縋るように顔を寄せてきた。強引な言葉とは裏腹に、まるで飼い主に捨てられるのを恐れる忠犬のように見える。
 どうやらおれは、自分よりも身体の大きなこの後輩がかわいいらしい。
「だったらがっつくな。いい子に待ってろよ。おれがおまえを受け入れられるようになるまで」
 佐島が勢いよく顔を上げた。その瞳が希望に輝く。
「それはいつ? いつになったら俺を受け入れてくれるの?」
 真剣な瞳で問い詰めてくる佐島に、おれは正直に答える。
「それはわからない」
 今度はがっくりと肩を落とした。
「俺はいつまでお預けを食らうんだ」
「ほら、顔上げな。餌ならときどきやるよ。……誕生日おめでとう」
 そう言って、おれは佐島の唇に滲んだ血を舌で舐めとってやった。
 佐島が間抜けな顔でおれを見る。
「本当はメール見てたの?」
「たしかにメールは見たけど、おまえの誕生日ならその前から知ってたよ」
 すると「待て」のできない佐島は、感極まった様子で再び俺の身体を抱き込んで唇を合わせてきた。
 佐島の熱い舌がおれの歯列を割って入り込んでくる。絡み付いてくる血の味に、おれは頭の芯がぼうっとしてくる。
 そのとき、図書室の扉が開く音がした。
 誰かが入ってきた。
 焦ったおれは、自分の舌で佐島の舌を追い出そうとしたが、佐島は言うことをきかない。
 おれは視界がぼやけるほど近くにある佐島の目を睨みつけた。
 けれど、佐島は一向に怯まない。「騒がなければ誰も気づかない」とその目が言っている。
 ……くそっ。もう、どうにでもなれ。
 おれは半ばやけっぱちな気持ちで佐島の背中に腕をまわした。そうしたら、脳みそが溶けそうなくらい気持ちよかった。
 きっとおれはバカになる。
 バカになって、こいつなしではいられなくなる。
 初めての感覚に溺れながら、おれはそう自覚した。



END


目次へ
「図書室だより」本編 第1話へ



今日は「まなざし」の第2部の代わりに、枯れかけたストックの中から
以前イチゴさんからリクエストのあったこちらを上げてみました。
イチゴさんもみなさんも、もうお忘れかもしれませんが…。

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いやぁ~
私の好きな中也くんだ!!
なになに、なんて可愛らしい生き物になっちゃってるの?!
八尋のチューも良かったけど(しつこい?へへ)中也くんのチューはぶっちぎり1番だよ。
素敵番外編で今日も1日楽しく過ごせそう(笑)
2008/11/06 09:31 *edit
おはようございます!
>なになに、なんて可愛らしい生き物になっちゃってるの?!
↑ツンデレのデレを増量してみました(笑)。

>八尋のチューも良かったけど(しつこい?へへ)中也くんのチューはぶっちぎり1番だよ。
↑あはは、まだ八尋のチューとか言ってます(笑)。
私が書くものはほとんどチュー止まりですからね。
もっとバリエーションを増やしていかねば~。

>素敵番外編で今日も1日楽しく過ごせそう(笑)
↑私も六花さんのおかげでエンジンがかかりました!
今日も1日がんばります!
朔田圭子 2008/11/06 10:03
きあああーーー!!
きたっ!!中也くん視点!!!眼鏡ツンデレ顕・在!!!ワンコの一威っち(なんか変)も顕・在!!!

>「俺はいつまでお預けを食らうんだ」
>「ほら、顔上げな。餌ならときどきやるよ。……誕生日おめでとう」
このやりとり、たまらんです…!!餌って…餌って!!
きゃわいすぎる~~~!!
朔田さん、ありがとうございます♪♪ごちそうさまです~~♪♪
このお話で萌えパワー充電できました♪
イチゴ 2008/11/07 14:03 *edit
きた?
いや~、イチゴさんに喜んでもらえてよかったです~。
書いた甲斐がありました。
今のところ私のラブラブはこのあたりが限界ですかね(笑)。

>このお話で萌えパワー充電できました♪
↑私もいつもイチゴさんのところでパワーをわけていただいてるので、
萌えパワー返しということで(笑)。
朔田圭子 2008/11/07 15:27
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■□ INFORMATION

【8/12】
誠に勝手ながら当ブログを
活動休止とさせていただきます。

【5/16】
すいません。
現在、潜伏中です。

【5/7】
突然ですが模様替えをしました。
慣れないうちはなにかとご不便を
おかけするかもしれませんが、
何卒ご容赦くださいませ。

【4/23】
「お久しぶりです」の方も
「はじめまして」の方も
こんな隅っこブログにお越しいただき
どうもありがとうございます。
ご挨拶が遅れてすみません…。
ぼちぼち更新してまいりますので
これからもよろしくお願いいたします。


【1/3】
あけましておめでとうございます。
昨年中はこんなぐだぐだなサイトを
見捨てずに応援してくださり
本当にありがとうございました。
今年もお付き合いいただけると
うれしいです♪
どうぞよろしくお願いいたします。


【11/3】
長らく放置してすいません><
こんな状況でも訪問してくださる方
本当にどうもありがとうございます!
ひとことでも感想などいただけると
朔田が泣いてよろこびます~。


【6/14】
ご無沙汰してます。本文の文字を
ちょっぴり大きくしてみました。
少しは読みやすくなったかな?


【4/21】
現在、ちょーゆるゆる更新中です。
忘れた頃になにかがアップされてる
…かも……?


【1/19】
「浅葱色の少年」は完結しました。
応援してくださったみなさま、
どうもありがとうございました!


【1/15】
新作「浅葱色の少年」を更新中です。
かすかにBLが薫るお伽噺みたいな?
楽しんでいただければ幸いです♪


【1/15】
趣味でやっていた〈ひとり光画部〉は
閉鎖しました。ご愛顧ありがとうござ
いました。


【1/15】
「石榴館」はすてき絵師・東風さんと
一緒に遊んでる吸血鬼シリーズです。
          詳しくはこちら→
石榴館 作品紹介

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管理人:朔田圭子(さくた けいこ)

さくたはめがねがだいすきだよ。それからかえるとかすなふきんとかみどりいろのものがすきみたい。 めーるふぉーむだよ♪ さくたがなんかゆってるww
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