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 宵藍は自分の目を疑った。
 しかし、宵藍が彼を見間違えるわけがない。
「浅葱……」
 たしかに彼は、Nシティから姿を消した浅葱だった。
「そうです。あの浅葱ですよ。彼が目を覚ましたときが、第2号の誕生の瞬間です。そうだ。感動の瞬間に、きみたちにも立ち会っていただきましょう」
 宵藍の隣で、アオギリが低い呻き声を漏らした。その青い瞳には、モニターの中で眠る浅葱の姿が映っている。
「どうして浅葱が……」
 湖緑はアオギリを嘲笑うように言った。
「なんて顔をしているんです。きみにはもう必要のない人間なのでしょう? だから僕が貰い受けたんです。Nシティのレーサーは貴重な検体ですからね」
 宵藍は足元から震えが這い上がってくるのを感じた。
「ふざけるなっ。浅葱は、レーサーはおまえのおもちゃじゃないっ。なんでアイオーンのために犠牲にならなきゃならないんだ。アイオーンがなんだっていうんだ」
 湖緑は眼鏡を押さえて、上目遣いに宵藍の表情を窺う。
「おやおや、きみだってアイオーンの血を引く人間なんですよ。僕の研究の成果が、いずれきみの役に立つ日がくるかもしれないじゃないですか」
 宵藍は全身が総毛立った。そのおぞましさに吐き気が込み上げてくる。
「……なんて冗談ですよ。実はこの研究はアイオーンのためのものでも、ましてやきみのためのものでもありません」
 湖緑は声を潜めた。
「ここだけの話ですよ。この研究は、僕自身のためのものなんです」
  眼鏡の奥に隠されていた野望が露になる。
「不老長寿を手に入れるのは僕だけでいいのです。白雨(はくう)……今の2代目もそう長くはありません。目障りな天藍も、GPが終わったら僕のための実験体になってもらいます。データはもう充分に取れましたからね。もちろん、きみたちもです」
 食いしばった歯の隙間から絞り出すように宵藍は言った。
「あんたは狂ってる」
 湖緑の顔に暗い笑みが浮かぶ。
「僕が狂っていると言うなら、初代はきっと狂い死にしたのでしょう。ふふ、きみはどんなふうに狂っていくのかな」
 さらにこう付け加えた。
「ああ、逃げようとしても無駄ですよ。僕の許可がなければ、シン・シティの壁は抜けられない」
「ならば、おまえを殺してでも出てやるさ」
 アオギリが銃口を湖緑に向けた。
 その瞬間、メイズが振り返って銃を掴んだ。アオギリは銃を渡すまいと、身体ごとメイズにぶつかっていく。2人が床に倒れ込み、揉み合いになったそのとき、一発の銃声が轟いた。
 宵藍の身体に緊張が走る。
「アオギリッ」
 切迫した叫び声が、部屋の空気を震わせた。
 先に立ち上がったのはメイズだった。彼は平然とした表情でアオギリを見下ろしていた。
 一方、アオギリはぎこちない動きで身体を起こし、両手を床について身体を支えている。
 宵藍はアオギリに飛びついた。
「アオギリ、しっかり。どこを撃たれたの?」
 アオギリは服の脇を摘まんで見せた。
「大丈夫だ。服に穴が開いただけだ」
 そう言って、アオギリ自身もほっと息を吐いた。
 急激に緊張の糸が緩み、宵藍はその場にしゃがみ込んだ。
「よかった……」
 しかし、状況はむしろ悪化していた。
「形勢逆転ですね」
 湖緑が言うと、メイズは銃口を2人に向けた。
「さて、どうしましょうか。なにも絶対にGPに出場させなければいけないこともありませんしね。楽しみにしている市民たちは残念でしょうけど、とりあえず棄権ということでいいですか?」
 湖緑が楽しげに提案する。
 宵藍は膝の上でぎゅっと拳を握った。
「その前にひとつ教えてくれ。東雲は……母さんはどうしてるの?」
 天気かなにかの話でもするように、湖緑は事もなげに答えた。
「ああ、彼女はもともと病弱でしたからね。海藍が事故死したと知って、日に日に弱っていきました。亡くなったのはその半年後でしたよ」
 宵藍は愕然となった。
 東雲は10年も前に死んでいた。宵藍がシン・シティGPを目指し始めた頃には、すでに彼女はこの世にいなかったのだ。
 震える手で顔を覆う宵藍を、アオギリの腕が抱き寄せた。
「東雲に海藍の死を知らせたのもおまえか」
「さあ、どうだったかな」
 言いながら、湖緑は上着の内ポケットから細身の銃のようなものを取り出した。
「さて、そろそろ眠ってもらいましょう。まずはきみからです、アオギリ」
 湖緑が麻酔銃らしきものをアオギリに向けた。
 そのとき、背後で再びドアの開く音がした。
 次の瞬間、一斉に男たちが雪崩れ込んできて、湖緑とメイズを取り囲んだ。あっという間の出来事だった。
 8つの銃口が2人に集中している。
「なんだっ、おまえたち」
 湖緑は椅子から腰を浮かせた格好で硬直していた。それでもなんとか威厳を保とうと、男たちの無礼を叱責する。しかし、いつもの余裕は消え失せていた。
「どういうつもりだ。ここは僕の研究室だぞ。勝手なことは僕が許さない。出て行けっ」
「勝手を許さないのは僕のほうですよ、湖緑」
 凛とした声が部屋の中に響いた。
 宵藍は声のしたほうを振り返った。
 そこには自分と同じ顔、同じ背格好の男の姿があった。
 湖緑が唸るように吠えた。
「天藍っ、なんの真似だっ」
 真夜中の湖の水面を思わせる静かな瞳が湖緑を見つめる。
「我々はあなたの不穏な動きに気づき、密かに監視していました。そして、あなたを拘束する機会を窺っていたのです」
 それを聞いた湖緑は、ぶるぶると震え出した。
「おまえにそんな権限はない。混血のくせに」
「そう。あなたと同じですよ」
「えっ」
 宵藍は湖緑の顔を見つめた。
 自らをアイオーンの後継者だと言っていた湖緑もまた、生粋のアイオーンではなかったのだ。
 ふ、と湖緑は笑いを零した。
「おまえは知っていたのか。僕が、初代が外腹に産ませた子だということを」
 天藍は頷いた。
「そして僕を憎み、アイオーンの座を狙っていることも」
「当然だろう。白雨に子がないからといって、なぜ次がおまえなんだ。おまえがアイオーンになれるなら、僕にだってその権利はあるはずだ。なのに、なぜ僕ばかりが蔑ろにされなければならないんだ」
「たしかに。でも、あなたのしていることは犯罪です。見過ごすわけにはいきません」
 天藍は傍らに立つ銀色の長髪の男に命じた。
「トキ、湖緑を拘束しろ」
 彼は素早い身のこなしで湖緑に近づき、彼の手首に枷を嵌めた。
「くそっ、2代目の飼い犬風情がっ」
 天藍は湖緑の前に進み出た。
「最後に、あなただけが知らされていなかった事実を教えましょう。2代目は、とうに逝去されています」
 湖緑は絶句した。
 天藍は哀れみに満ちた瞳で、項垂れる湖緑を見下ろした。
「現在のアイオーンは、この僕です」





最終話につづく                                      にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
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【8/12】
誠に勝手ながら当ブログを
活動休止とさせていただきます。

【5/16】
すいません。
現在、潜伏中です。

【5/7】
突然ですが模様替えをしました。
慣れないうちはなにかとご不便を
おかけするかもしれませんが、
何卒ご容赦くださいませ。

【4/23】
「お久しぶりです」の方も
「はじめまして」の方も
こんな隅っこブログにお越しいただき
どうもありがとうございます。
ご挨拶が遅れてすみません…。
ぼちぼち更新してまいりますので
これからもよろしくお願いいたします。


【1/3】
あけましておめでとうございます。
昨年中はこんなぐだぐだなサイトを
見捨てずに応援してくださり
本当にありがとうございました。
今年もお付き合いいただけると
うれしいです♪
どうぞよろしくお願いいたします。


【11/3】
長らく放置してすいません><
こんな状況でも訪問してくださる方
本当にどうもありがとうございます!
ひとことでも感想などいただけると
朔田が泣いてよろこびます~。


【6/14】
ご無沙汰してます。本文の文字を
ちょっぴり大きくしてみました。
少しは読みやすくなったかな?


【4/21】
現在、ちょーゆるゆる更新中です。
忘れた頃になにかがアップされてる
…かも……?


【1/19】
「浅葱色の少年」は完結しました。
応援してくださったみなさま、
どうもありがとうございました!


【1/15】
新作「浅葱色の少年」を更新中です。
かすかにBLが薫るお伽噺みたいな?
楽しんでいただければ幸いです♪


【1/15】
趣味でやっていた〈ひとり光画部〉は
閉鎖しました。ご愛顧ありがとうござ
いました。


【1/15】
「石榴館」はすてき絵師・東風さんと
一緒に遊んでる吸血鬼シリーズです。
          詳しくはこちら→
石榴館 作品紹介

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管理人:朔田圭子(さくた けいこ)

さくたはめがねがだいすきだよ。それからかえるとかすなふきんとかみどりいろのものがすきみたい。 めーるふぉーむだよ♪ さくたがなんかゆってるww
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