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 シン・シティの壁の外は50メートル幅の堀がぐるりと囲んでおり、そこに架かっている橋は一般用と物資などの搬入出用の2本のみである。窓のない装甲車のような専用車両が、管理局のチェックを通過した者だけを乗せ、Nシティとシン・シティの間を往復している。これに乗らなければ壁を通過することはできないし、一度乗ってしまったら途中で降りることもできない。
「外の風景が見えない乗り物って、気分がよくないね」
 宵藍の向かいの席に座った蘇芳が不満を漏らした。彼の隣のハイタカも同じ意見らしく、つまらなそうに頷いた。
 窓がないことを除けば、車内は想像していたよりも快適だった。4人掛けのボックス席はゆったりとしているし、シートのクッションもちょうどいい具合だ。揺れもほとんど感じない。利用者は特権階級の人間ばかりなのだから、当然といえば当然かもしれない。
 いつ壁を抜けたのかわからないまま、車内アナウンスが鳴って、4人はシン・シティのターミナルに降り立った。今度はシン・シティ側の管理局のチェックを受けてからターミナルを出ると、目の前に黒塗りの大型自動車が停車していた。その傍らに立っていた10代半ばくらいの少年が、宵藍たちに近づいてくる。
「宵藍さんとチームのみなさんですね? お待ちしておりました」
 宵藍は自分よりも小柄な少年を見下ろした。
「きみは?」
「ぼくはアビと申します。ご滞在中、みなさんのお世話をさせていただきます。さ、どうぞ」
 世話係がつくという話は聞いていたが、こんな子どもだとは思ってもみなかった。
 アビは後ろの座席のドアを開けた。広々としたスペースに、肘掛のついたシートが2席ずつ向かい合いになっている。宵藍たちは気後れしつつも促されるままに乗り込んだ。
 するとアビは運転席に座ってハンドルを握った。
「えっ、きみが運転するの?」
 質問の意図が伝わらなかったのか、アビは少し戸惑った表情で頷いた。
「そうですよ」
 どう見ても子どものアビが大型の自動車を運転するという事実が、バイクしか乗ったことのない宵藍たちには信じがたく、恐ろしいような気さえした。
 けれど、走り出してしまえば心配するほどのこともなく、微かなモーター音とともに窓の外の風景が後方へとスムーズに流れていく。
「これが電気で走る車か」
 蘇芳が感心していると、アビがルームミラーを覗きながら訂正した。
「いいえ、電気ともちょっと違います。シン・シティで開発された独自の動力システムを使用しているんです」
「ふうん」
「Nシティではまだ旧式の自動車が走っているのですか?」
 アビの無邪気な質問に、蘇芳は少しむっとして答えた。
「そうだよ。悪いかよ」
 あからさまに不機嫌な声に、アビが慌てる。
「いいえ、そんなことはありません。ぼくはここ以外の暮らしを知らないので……。気を悪くされたのならお詫びします。すみませんでした」
 年下の子どもをここまで謝らせてしまったことが気まずいようで、蘇芳は弱り顔で頭を掻いた。
 それを見てハイタカがフォローする。
「アビ、きみが謝ることはない。この男は口が悪くてね。でも、人間は悪くないんだ。許してくれ」
「いえ、そんな……」
 かえって恐縮している少年に、宵藍はやさしく声をかけた。
「アビ、5日間という短い間だけどよろしくね」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
 アビはルームミラーに向かってにっこり微笑んだ。
 宵藍は注意深く観察した。
 アビの笑顔に裏はないように見える。彼が医局から送り込まれてきたのだとしたら、宵藍の監視要員ということになる。しかし、どう見ても彼に後ろ暗いところは感じられない。まだ世間を知らない子どものようだ。そんな彼が極秘の任務を帯びているとはとても思えない。
 おれはなにを考えているんだ。
 宵藍は猜疑心に囚われた自分を恥じた。
 それから宿舎に到着するまでの間、宵藍たちは窓の外を眺めては、あれはなんだ、どうしてだ、とアビを質問攻めにした。
 それでわかってきたことだが、白を基調とした清潔な街並が広がるシン・シティは、規律正しく、隅々まで管理が行き届いているらしい。雑然としたところがひとつもない。
 そのせいか、多くの店が建ち並ぶ市街地だというのに、いまひとつ活気がない。Nシティの混沌としたエネルギーに比べれば、この街はまるで眠っているようだった。心なしか、通りを行き交う人々も生気がないように見える。
「アビ、あれは? 上を通ってるのはなに?」
 宵藍は時折頭上に見える道路のようなものを見上げた。それは建物の合間を縫うように走っている。
「あれはロードレースのサーキットです」
「えっ?」
 ほかの3人も窓の外を見上げた。
「あれが? あそこをバイクで走るのか?」
 蘇芳が驚愕の声をあげた。
「そうです。シン・シティのロードレースはすべてあのサーキットで開催されます。もちろんGPも」
 アビの話によると、サーキットのコースは複数に枝分かれしたり合流したりしながら、シン・シティ内を隈なく巡っているらしい。もちろん緩やかなアップダウンから本格的なヒルクライムまで用意されており、レースごとにさまざまなコース選択ができるようになっている。要所要所にカメラも設置してあり、観客は街のいたるところにある大型モニターや自宅のモニターで、リアルタイムでレースを観戦できる仕組みになっている。
「観客は直接レースを見ることはできないのか?」
 アオギリが驚いた様子で訊ねた。宵藍も沿道に観客の姿がないレースなど想像できない。
「いいえ、サーキットよりも高い建物からなら見ることができます。あと、アリーナでスタートとゴールの模様を直接観戦することもできますが、そこに入れるのは、一部の特権階級と抽選で当選した人たちだけです」
 道端に出れば誰でもレースを観戦することのできるNシティでは考えられないことだ。
「どうやらロードレースに対するスタンスが、Nシティとはだいぶ違うらしいな」
 ハイタカの声には落胆の色が滲んでいた。





第24話につづく                                      にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
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【8/12】
誠に勝手ながら当ブログを
活動休止とさせていただきます。

【5/16】
すいません。
現在、潜伏中です。

【5/7】
突然ですが模様替えをしました。
慣れないうちはなにかとご不便を
おかけするかもしれませんが、
何卒ご容赦くださいませ。

【4/23】
「お久しぶりです」の方も
「はじめまして」の方も
こんな隅っこブログにお越しいただき
どうもありがとうございます。
ご挨拶が遅れてすみません…。
ぼちぼち更新してまいりますので
これからもよろしくお願いいたします。


【1/3】
あけましておめでとうございます。
昨年中はこんなぐだぐだなサイトを
見捨てずに応援してくださり
本当にありがとうございました。
今年もお付き合いいただけると
うれしいです♪
どうぞよろしくお願いいたします。


【11/3】
長らく放置してすいません><
こんな状況でも訪問してくださる方
本当にどうもありがとうございます!
ひとことでも感想などいただけると
朔田が泣いてよろこびます~。


【6/14】
ご無沙汰してます。本文の文字を
ちょっぴり大きくしてみました。
少しは読みやすくなったかな?


【4/21】
現在、ちょーゆるゆる更新中です。
忘れた頃になにかがアップされてる
…かも……?


【1/19】
「浅葱色の少年」は完結しました。
応援してくださったみなさま、
どうもありがとうございました!


【1/15】
新作「浅葱色の少年」を更新中です。
かすかにBLが薫るお伽噺みたいな?
楽しんでいただければ幸いです♪


【1/15】
趣味でやっていた〈ひとり光画部〉は
閉鎖しました。ご愛顧ありがとうござ
いました。


【1/15】
「石榴館」はすてき絵師・東風さんと
一緒に遊んでる吸血鬼シリーズです。
          詳しくはこちら→
石榴館 作品紹介

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管理人:朔田圭子(さくた けいこ)

さくたはめがねがだいすきだよ。それからかえるとかすなふきんとかみどりいろのものがすきみたい。 めーるふぉーむだよ♪ さくたがなんかゆってるww
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