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 昨夜から天気が大荒れで、今日はロードに出られなかった。宵藍はトレーニングルームのエアロバイクで汗を流し、昼食を挟んでからは筋力トレーニングに精を出した。夕食の前にマッサージとシャワーを終えて部屋に戻ると、アオギリが声をかけてきた。
「話がある」
 宵藍は頷いて、ベッドに腰を下ろした。アオギリも自分のベッドに腰を下ろし、宵藍と向かい合う。
「浅葱が見つからない」
 アオギリはため息をついた。
 ここ数日アオギリが浅葱の行方を追っていることに、宵藍は気づいていた。浅葱とけじめをつけるというバーミリオンとの約束を果たすために、自由時間になると浅葱を捜しに出かけるアオギリを、宵藍は黙って見守っていた。
 しかし、浅葱はセントラル区から忽然と姿を消してしまった。
「アマ時代に世話になったバイク屋の2階のアパートに戻っているものとばかり思っていたんだが、そこに浅葱はいなかった。ほかも心当たりのあるところはすべてあたってみたが、浅葱はどこにもいなかった」
 消沈するアオギリを励ますように、宵藍は明るい声を装った。
「浅葱の故郷はどこ? 実家に帰ったんじゃないの?」
「どこだかわからない。浅葱は故郷にいい思いではないといって、あまり話をしたがらなかった」
「あっ、湖緑ならなにか知ってるんじゃない? おれが浅葱に嵌められたことを証明するために、ずいぶん動いてくれてたみたいだから、浅葱にも会ってるはずだよ」
「湖緑か……」
 なにか言いたげなアオギリの腕をとって、宵藍はケアルームへ急いだ。
 1階に下りると、廊下にケアルームの灯りが漏れていた。
「よかった。まだいるみたいだ」
 コンコン。
 ドアをノックして隙間から中を覗いた。
「湖緑、ちょっといい?」
 デスクに向かってなにやら書きものをしていたらしい湖緑が、にこやかに振り返った。
「どうぞ、宵藍。あ、アオギリも一緒ですか」
 湖緑は眼鏡をはずし、クロスで拭いてから掛け直した。
「立ってないで掛けたらどうです?」
 宵藍は湖緑が示した丸椅子に座ったが、アオギリはマッサージ台に浅く腰を掛けた。
「で、ご用件は?」
 湖緑の細い目が、宵藍に向けられた。宵藍はアオギリに目をやり、それから湖緑に切り出した。
「もしも浅葱の居場所を知っているなら、教えてほしいんだ」
「知ってどうするんですか?」
 その質問にアオギリが答える。
「浅葱と会って、きちんとけじめをつけたい。今回の事件は、俺と浅葱の問題が引き起こしたことだ」
「ユーリから聞いたよ。湖緑はおれの疑いを晴らすために、いろいろ動いてくれたんでしょ? そのとき、浅葱にも会ったんじゃないの?」
 湖緑は長い指で器用にペンを弄びながら答えた。
「たしかに浅葱には会いました。協会で証言をさせるためにね。彼は役員たちの前で、ドーピングの件から以前宵藍のバイクのブレーキに細工をしたことまで、すべて話してくれましたよ。でも、それだけです。その後、彼がどうしているかは知りません」
 知らないと言われても、はいそうですかと引き下がる気にはなれない。
「アオギリが捜しまわったんだけど、どうもこのセントラル区にはいないみたいなんだ」
 湖緑は考え込むしぐさを見せてから言った。
「おそらくアオギリに会わせる顔がなくて、故郷にでも帰ったんでしょう。そういえば、そんなことを言っていたような気もします」
「本当?」
「ええ」
「浅葱の故郷がどこだか知ってる?」
「そこまでは知りませんよ」
 それでも宵藍は食い下がった。
「ユーリや監督なら知ってるかな?」
「いや、それもないですね。カルテにも記載されていません。契約時にいちいち選手の出生地を調べることはしないし、チームにとってはどうでもいいことです。要は選手として使えるかどうかですからね」
「そう……」
 宵藍は肩を落とした。
 湖緑は宵藍を諭すように言った。
「彼のことはもう忘れることです」
 宵藍とアオギリは、湖緑に礼を言ってケアルームをあとにした。釈然としないまま、2人は重い足取りで部屋に戻った。
「湖緑もだめだったか」
 宵藍はベッドに寝転がって呟いた。
 アオギリもベッドに腰を下ろし、ため息をついた。
「ここまでだな」
 その言葉に宵藍は飛び起きた。
「諦めるの? アオギリはそれでいいの?」
「ああ」
 アオギリは穏やかな表情で頷いた。
「正直、俺の中ではとっくにけじめはついているんだ」
「え……」
「おまえを陥れたのが浅葱だとわかって、もう俺の知っているあいつはいないんだと思った。だから、未練はない。ただ……ひと言別れを言いたかった。おまえが納得する形で、浅葱と決別したかったんだ」
 アオギリの気持ちを考えると、単純に喜ぶ気持ちにはなれない。
「アオギリ……」
「俺はおまえを選んだ。だから俺はおまえのためだけに走る」
 アオギリの真摯な眼差しが宵藍を捉えた。
「俺はなにに誓えばいい?」
 宵藍はアオギリの銀色がかった青い瞳を見つめ返した。
「アオギリ自身に」





第17話につづく                                      にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
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【8/12】
誠に勝手ながら当ブログを
活動休止とさせていただきます。

【5/16】
すいません。
現在、潜伏中です。

【5/7】
突然ですが模様替えをしました。
慣れないうちはなにかとご不便を
おかけするかもしれませんが、
何卒ご容赦くださいませ。

【4/23】
「お久しぶりです」の方も
「はじめまして」の方も
こんな隅っこブログにお越しいただき
どうもありがとうございます。
ご挨拶が遅れてすみません…。
ぼちぼち更新してまいりますので
これからもよろしくお願いいたします。


【1/3】
あけましておめでとうございます。
昨年中はこんなぐだぐだなサイトを
見捨てずに応援してくださり
本当にありがとうございました。
今年もお付き合いいただけると
うれしいです♪
どうぞよろしくお願いいたします。


【11/3】
長らく放置してすいません><
こんな状況でも訪問してくださる方
本当にどうもありがとうございます!
ひとことでも感想などいただけると
朔田が泣いてよろこびます~。


【6/14】
ご無沙汰してます。本文の文字を
ちょっぴり大きくしてみました。
少しは読みやすくなったかな?


【4/21】
現在、ちょーゆるゆる更新中です。
忘れた頃になにかがアップされてる
…かも……?


【1/19】
「浅葱色の少年」は完結しました。
応援してくださったみなさま、
どうもありがとうございました!


【1/15】
新作「浅葱色の少年」を更新中です。
かすかにBLが薫るお伽噺みたいな?
楽しんでいただければ幸いです♪


【1/15】
趣味でやっていた〈ひとり光画部〉は
閉鎖しました。ご愛顧ありがとうござ
いました。


【1/15】
「石榴館」はすてき絵師・東風さんと
一緒に遊んでる吸血鬼シリーズです。
          詳しくはこちら→
石榴館 作品紹介

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管理人:朔田圭子(さくた けいこ)

さくたはめがねがだいすきだよ。それからかえるとかすなふきんとかみどりいろのものがすきみたい。 めーるふぉーむだよ♪ さくたがなんかゆってるww
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