忍者ブログ
創作BL小説ブログ
ADMIN | WRITE | RESPONSE
■□ [PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 ワンデイレースを翌日に控えた今日は、疲れを明日に引きずらないよう、軽めのトレーニングメニューとなっている。サデの指示で、宵藍はアオギリにともにロードに出ていた。
 くねくねと折れ曲がった峠の坂道を、宵藍はアオギリに引かれて登った。身体の軽い宵藍は、いつもならヘアピンカーブを勾配のきついインコース寄りから攻めるのだが、アオギリは宵藍の身体を気遣って、勾配の緩いアウトいっぱいにコースをとった。
 おれのことだけを考えろ。
 その言葉を、アオギリはどのように受け止めたのだろうか。
 宵藍は驕って言ったわけではない。そう言わずにはいられないほど不安だったのだ。その不安を隠すためには、強がって見せるしかなかった。



 

 カテゴリーA級の峠越えを含む起伏に富んだ山岳コースが注目の、全長185キロメートルのワンデイレース。本日のエントリーチームは8つ。総勢64名の選手が強さを競う。
 セントラル区の中央広場をスタートし、まずは南下。街を出たら西へ進路をとる。W区の酪農地帯に入ったあたりから緩やかなアップダウンが始まり、終盤には畳みかけるような峠越えが待ち構えている。
 スタートの瞬間を待つ選手たちの緊張が、中央広場を満たしている。それをさらに観衆の喧騒が包み込む。
 スタートラインの最前列を陣取るのは強豪チームと決まっている。その中央に宵藍はいた。
「宵藍、今日はオレが勝つよ」
 右側からバーミリオンが笑顔で拳を突き出してきた。
「それはどうかな」
 バーミリオンの拳に自分の拳をぶつけ、宵藍は不敵に笑った。それから左に控えているアオギリに視線をやる。
 アオギリは無言で頷いた。
 宵藍とアオギリは、この一戦で〈プロキオン〉のエースとそのアシストとしての真価を問われるのだ。無様な走りはできない。
 時間いっぱいだ。
 スタートのサイレンが高らかに鳴った。
 一斉にスタートした集団は、大観衆の中を悠然と走る。スタート直後はバイクが密集しているため、なかなかスピードが上がらないが、街を抜け出すと徐々にペースアップしていき、集団は縦に伸びていく。
 そして、チーム関係なくローテーションを組み、風の抵抗を一身に受ける先頭を交代しながら走るうちに、集団の速度は時速40キロメートルを超えた。
 〈プロキオン〉や〈アルタイル〉といった有力チームに大きな動きがないため、選手たちは大集団となって整然と走り続けた。辛うじて緑の残る開けた大地を、まるでひとつの生き物のように移動する。
 こういう状況のときは選手たちもリラックスし、顔見知りの選手に挨拶をしたり、情報交換をしたりしながら平和に走る。宵藍もバーミリオンと会話を交わしながらペダルを踏んでいた。
 そこへ〈プロキオン〉や〈アルタイル〉に次ぐ実力派チーム〈リゲル〉のエースが近づいてきた。
「相変わらず仲がいいね。そんなんで優勝争いができるのか?」
「げっ、セージ。おまえはあっち行けよ」
 バーミリオンは露骨に厭な顔をした。彼は顔を見れば必ずからかってくるこの年上の男を嫌っている。
 セージはかまわず宵藍に話しかける。
「あれ? アオギリはまだきみのアシストをしているの? この前、彼の移籍の噂を耳にしたんだけど」
 宵藍の眉がぴくりと反応する。
「ガセじゃない?」
 するとセージは、宵藍の前を走るアオギリの背中に意味ありげな視線を投げた。
「ふーん。まあ〈プロキオン〉がそう簡単にアオギリを手放すわけないしね」
 バーミリオンほどではないが、宵藍もこの男があまり好きではなかった。だから、彼がなにを言ってきても無視することにした。
 集団に動きが見え始めたのは、丘陵地帯に入ってからだった。緩やかな登坂で、あるチームのルーラーがアシストを連れて飛び出した。しかし、優勝争いに絡んできそうなチームではないため、誰も反応しない。集団に揺さぶりをかけるつもりだったのだろうが、2人きりでは分が悪すぎた。彼らはあっという間に集団に吸収され、エスケープは失敗に終わった。
 アップダウンが険しくなってくると、ついに集団がばらけ始めた。強豪チームを含む第一集団と、そのスピードについていけなくなって間延びした後続集団とに分裂する。山岳に突入すれば、その差はさらに広がるだろう。
 宵藍とアオギリは、第1集団にいるバーミリオンをぴったりとマークしている。優勝するためには、絶対に彼を逃がしてはならない。パンデュロとアクセルロディ、ウツギの3人が、集団をコントロールするために先頭に踊り出た。すかさず〈アルタイル〉、〈リゲル〉、〈ベガ〉といったチームの選手たちが反応する。互いに牽制し合いながら、宵藍たち先頭グループはますますスピードを上げていき、ついに第1集団から抜け出した。
 宵藍とバーミリオン、そしてセージを含む16人の先頭グループは、チームを超越した協力体制に入った。アシストたちがローテーションを組み、エースの風除けになってグループを引いた。後続集団はすぐに見えなくなった。
 それまで順調に走っていた宵藍をアクシデントが襲ったのは、山岳の登り口まであと数キロメートルという地点だった。
 ジャージの襟元にクリップで留めてある小型マイクで、チームカーに呼びかける。
「宵藍です。パンクしました」
 しかし、返事がない。
 先頭グループから抜けて、宵藍は路肩にバイクを止めた。アオギリも一緒にバイクを止める。
「どっちだ?」
「フロント。リム打ちしたかも」
 石畳が荒れている古い道では、パンクや落車などのアクシデントは珍しくない。前時代の人々が残した道を再利用することの多いNシティでは、コンディションのよい道を探すほうが難しいかもしれない。
 アオギリは今まで走ってきた道を振り返った。
「チームカーと無線が繋がらない。後方でなにかあったのかもしれない」
 そのとき、イヤホンからサデの声が届いた。後方で起こった落車事故に足止めを食らっていて、すぐには駆けつけられないという。
「俺のタイヤと交換しよう」
 アオギリがホイールごとタイヤを外そうと、クイックリリースのレバーに手をかけたところへ、パンデュロが戻ってきた。
「宵藍、俺のタイヤを使え」
 言いながら、パンデュロは躊躇することなく自分のバイクからタイヤを外す。
「えっ、でも……」
「今ここでアオギリを欠くのは痛い。どうせ山岳に入ったら俺の出番は終わりだ。ここでのんびり遅れているムクロジを待つさ」
「わかった」
 アオギリはパンデュロが差し出したタイヤを受け取り、手際よく宵藍のバイクにセットした。
「いくぞ、宵藍」
 宵藍のバイクを手で押して助走をつけるパンデュロを一度だけ振り返り、宵藍は走り出した。
 しばらくアオギリに引かれて先頭グループを追走すると、思っていたよりも早く追いつくことができた。おそらくバーミリオンがほかの選手たちに呼びかけて、宵藍を待つために集団の速度を落としてくれたのだろう。こういう点では、ロードレースは実に紳士的なスポーツと言える。
「お待たせ」
 宵藍がバーミリオンに微笑むと、バーミリオンも笑顔で答える。
「宵藍がいないとつまらないからね」
 けれど、宵藍のチームメイトであるアクセルロディは、不服そうな顔をしていた。本当は待ちたくなどなかったのだろうが、ここで自分のチームのエースをおいていってしまうわけにはいかない。
 足並みが揃うと、集団は再びスピードを上げ始めた。





第13話につづく                                      にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
PR
■□ COMMENT
HN:
TITLE:
COLOR:
MAIL:
URL:  Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
COMMENT:
PASS:
■□ TRACKBACK
トラックバックURL:


■□ INFORMATION

【8/12】
誠に勝手ながら当ブログを
活動休止とさせていただきます。

【5/16】
すいません。
現在、潜伏中です。

【5/7】
突然ですが模様替えをしました。
慣れないうちはなにかとご不便を
おかけするかもしれませんが、
何卒ご容赦くださいませ。

【4/23】
「お久しぶりです」の方も
「はじめまして」の方も
こんな隅っこブログにお越しいただき
どうもありがとうございます。
ご挨拶が遅れてすみません…。
ぼちぼち更新してまいりますので
これからもよろしくお願いいたします。


【1/3】
あけましておめでとうございます。
昨年中はこんなぐだぐだなサイトを
見捨てずに応援してくださり
本当にありがとうございました。
今年もお付き合いいただけると
うれしいです♪
どうぞよろしくお願いいたします。


【11/3】
長らく放置してすいません><
こんな状況でも訪問してくださる方
本当にどうもありがとうございます!
ひとことでも感想などいただけると
朔田が泣いてよろこびます~。


【6/14】
ご無沙汰してます。本文の文字を
ちょっぴり大きくしてみました。
少しは読みやすくなったかな?


【4/21】
現在、ちょーゆるゆる更新中です。
忘れた頃になにかがアップされてる
…かも……?


【1/19】
「浅葱色の少年」は完結しました。
応援してくださったみなさま、
どうもありがとうございました!


【1/15】
新作「浅葱色の少年」を更新中です。
かすかにBLが薫るお伽噺みたいな?
楽しんでいただければ幸いです♪


【1/15】
趣味でやっていた〈ひとり光画部〉は
閉鎖しました。ご愛顧ありがとうござ
いました。


【1/15】
「石榴館」はすてき絵師・東風さんと
一緒に遊んでる吸血鬼シリーズです。
          詳しくはこちら→
石榴館 作品紹介

■□ COMMENTS
▼コメントありがとうございました!
[05/27 朔田]
[05/21 ままたみ]
[05/12 朔田]
[05/11 須和]
[05/11 ままたみ]
[05/10 須和]
[05/10 東風]
■□ PROFILE
管理人:朔田圭子(さくた けいこ)

さくたはめがねがだいすきだよ。それからかえるとかすなふきんとかみどりいろのものがすきみたい。 めーるふぉーむだよ♪ さくたがなんかゆってるww
■□ RANKING
▼ランキングに参加しています。お気に召しましたらポチッとしていただけると大変励みになります。    ※こちらは別窓が開きます。
にほんブログ村小説ブログBL小説ランキング    カテゴリ別オンライン小説ランキング

にほんブログ村トラコミュ[メガネくん萌え]
▲管理人をしています。メガネくん好きの方はぜひご参加ください♪
■□ SEARCH
忍者ブログ [PR]