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 どれくらいそうしていただろうか。不意にドアをノックする音が響いて、宵藍の意識は完全に現実に引き戻された。
 ベッドを離れてドアを開けると、そこにいたのはムクロジだった。
「ユルエンシスさんが、至急広間に集まるようにと……。監督も来ています」
「わかった」
 ムクロジは下階へ走っていった。
 ユーリたちが戻ってきたのか?
 部屋の時計を見ると、就寝の時刻が迫っていた。こんな時間に召集がかかるのは初めてのことだ。しかも監督まで一緒とは、ただごとではない。
 宵藍はにわかに緊張し出した。気を落ち着けるために何度か深呼吸を繰り返すと、覚悟を決めて部屋を出た。
 広間に入ると、すでに宵藍以外のメンバーは全員揃っていた。
 いや、浅葱の姿だけが見当たらない。
「全員揃ったな」
 宵藍がソファの一番端に座ったのを見届けてから、サデが立ち上がった。
「きみたちに報告しておくことがある。本日をもって〈プロキオン〉は浅葱との契約を打ち切った」
「ええっ」
 部屋中がどよめいた。みんなが驚愕の声をあげる中、宵藍は呆然とサデの顔を見つめていた。
 宵藍はてっきりアオギリと浅葱のコンビが復活し、自分は誰かのアシストか控えにまわされるのだと思っていた。それなのに、浅葱が解雇された。
 ということは、おれがアオギリのアシストになるのだろうか。
「監督、どういうことですか?」
 アクセルロディが質問すると、サデは彼を制止するように片手を上げた。
「これから説明する」
 ひと呼吸おいてからサデは続けた。
「浅葱は、我がチームに不利益をもたらす重大な裏切り行為を働いていた。シーズン途中にアオギリをライバルチームに売り込み、自分も一緒に移籍しようと画策していたのだ」
「なんだって?」
 再度どよめきが起こり、メンバー全員がアオギリを見た。
「それは本当なのか?」
 ハイタカは信じられないという表情でアオギリに問いかけた。しかし、アオギリは俯いたまま黙っている。
 そんな中、宵藍だけが合点のいった表情でアオギリを見つめていた。あのとき、バーミリオンとエンジュが目撃したというのは、まさにこれだったのだ。
「まあ、聞いてくれ」
 ユルエンシスが立ち上がった。サデはこの場を腹心の部下である彼に預けて椅子に腰を下ろす。
「アオギリは同意していなかった。それどころか、なんとか浅葱を思い止まらせようと説得を繰り返してきた。けれど浅葱はあのとおり、アオギリのためならなんでもやる男だ。アオギリをもう一度エースにしようと思い詰めていた浅葱は、アオギリの説得に応じなかった」
「なんで黙ってたんだよ。監督かマネージャーに相談すれば、すぐに解決する問題だろ」
 アクセルロディに責められても弁解を口にしないアオギリに代わって、湖緑が事情を説明する。
「相談したくてもできなかったんです。浅葱は宵藍を盾にとっていたんですよ」
 湖緑の話によれば、浅葱はアオギリが応じなければ、宵藍を二度と走れなくしてやると脅していたのだという。宵藍さえ潰してしまえば、アオギリは〈プロキオン〉に残留したとしてもエースに復帰できる。浅葱の真の目的は移籍ではなく、あくまでアオギリを再びエースの座に据えることなのだ。
「もちろん、この計画を誰かにばらしたときも宵藍に危害を加えると脅して、浅葱はアオギリの口を封じていました。そうですね?」
 湖緑がアオギリを振り返った。
 アオギリは苦しげに頷いた。
 それを見届けてから、再びユルエンシスが口を開く。
「みんな知っていると思うが、今日トレーニング中に宵藍が落車した。あれは浅葱の仕業だ。浅葱が宵藍のバイクのブレーキに細工をしたんだ。これについてはほかのメンバーの証言もとってある」
 ほかのメンバーというのは牙黄のことに違いない。けれど、ユルエンシスは彼の名前を伏せた。おそらく牙黄自身もわけがわからないまま、浅葱に利用されていただけなのだろう。
「アオギリが頑なだったため、浅葱は脅しを実行に移した。幸い宵藍はかすり傷で済んだが、一歩間違えば命を落としていた可能性もある。これはロードレーサーとしてはもちろん、人としても絶対に許されない行為だ。よって、浅葱は解雇処分となった」
 ユルエンシスの凛然たる声が室内に響いた。
 誰もが固唾を呑む中、ハイタカが手を上げた。
「アオギリはどうなるんだ?」
「彼はお咎めなしだ」
 ユルエンシスが答えると、サデが立ち上がった。
「チームオーダーに変更はなし。アオギリにはこれまでどおり宵藍のアシストについてもらう。以上だ」
 言い終えると、サデは大股で部屋から出ていった。ユルエンシスもあとに続く。
「じゃあ、僕も帰って寝るとしますか」
 湖緑が場違いなほど暢気な声で言った。
「みんなも夜更かししないで早く寝なさいよ」
 少し前屈みの特徴のある歩き方で退室する湖緑のあとを、宵藍は追いかけた。
 湖緑は廊下で立ち止まり、宵藍が呼び止めるよりも早く振り返った。
「あの……」
 追いかけてきたものの、なんと言ったらいいのか言葉が見つからない。ブレーキに細工した犯人を捜してくれたことには感謝したいが、犯人はあの浅葱で、しかも彼は解雇されてしまったのだ。単純に「ありがとうございました」とは言いにくい。
「湖緑は……最初から浅葱が怪しいと思っていたの?」
「まあね。でも、僕は浅葱の動向を調べて報告しただけで、処分を下したのは監督ですよ」
「そう……」
「とにかく、これで邪魔者はいなくなりました。宵藍はレースに集中しなさい。きみにはやるべきことがあるでしょう?」
 そうだ。宵藍にはツアー・オブ・Nシティで優勝し、シン・シティに入るという目的がある。立ち止まっている暇はない。
 そのときふと、この前と同じ疑問が脳裏を過ぎった。今度は思い切って訊ねてみる。
「おれ、湖緑にあの話をしたことあったっけ?」
 宵藍を見下ろす湖緑の目が、眼鏡の奥ですっと細くなった。
「あの話って?」
 逆に聞き返されて、宵藍は思わず後退りした。
「いや……なんでもない」
 やはり湖緑には、シン・シティにいる家族のことは話していない。
 だとしたら、おれの考えすぎかな。
 湖緑に一礼して、宵藍は自分の部屋へ向かった。
 それにしても、と先程の湖緑の言葉を振り返る。
 邪魔者はいなくなった。
 その言葉が、棘のように宵藍の胸に引っかかっている。今まで一緒にやってきた仲間を、邪魔者という一言で切り捨てられる湖緑の心理が理解できなかった。





第11話につづく                                      にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
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【8/12】
誠に勝手ながら当ブログを
活動休止とさせていただきます。

【5/16】
すいません。
現在、潜伏中です。

【5/7】
突然ですが模様替えをしました。
慣れないうちはなにかとご不便を
おかけするかもしれませんが、
何卒ご容赦くださいませ。

【4/23】
「お久しぶりです」の方も
「はじめまして」の方も
こんな隅っこブログにお越しいただき
どうもありがとうございます。
ご挨拶が遅れてすみません…。
ぼちぼち更新してまいりますので
これからもよろしくお願いいたします。


【1/3】
あけましておめでとうございます。
昨年中はこんなぐだぐだなサイトを
見捨てずに応援してくださり
本当にありがとうございました。
今年もお付き合いいただけると
うれしいです♪
どうぞよろしくお願いいたします。


【11/3】
長らく放置してすいません><
こんな状況でも訪問してくださる方
本当にどうもありがとうございます!
ひとことでも感想などいただけると
朔田が泣いてよろこびます~。


【6/14】
ご無沙汰してます。本文の文字を
ちょっぴり大きくしてみました。
少しは読みやすくなったかな?


【4/21】
現在、ちょーゆるゆる更新中です。
忘れた頃になにかがアップされてる
…かも……?


【1/19】
「浅葱色の少年」は完結しました。
応援してくださったみなさま、
どうもありがとうございました!


【1/15】
新作「浅葱色の少年」を更新中です。
かすかにBLが薫るお伽噺みたいな?
楽しんでいただければ幸いです♪


【1/15】
趣味でやっていた〈ひとり光画部〉は
閉鎖しました。ご愛顧ありがとうござ
いました。


【1/15】
「石榴館」はすてき絵師・東風さんと
一緒に遊んでる吸血鬼シリーズです。
          詳しくはこちら→
石榴館 作品紹介

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管理人:朔田圭子(さくた けいこ)

さくたはめがねがだいすきだよ。それからかえるとかすなふきんとかみどりいろのものがすきみたい。 めーるふぉーむだよ♪ さくたがなんかゆってるww
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