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【滝瀬編】

 教員用の古びた3階建てマンションにエレベーターなんてものはない。滝瀬は鞄のポケットを探りながら、重い脚で階段を上がった。
 最上階に辿りつき、取り出した鍵を手の中で弄びながら部屋の前まで歩くと、玄関ドアの脇の小窓に灯りがともっているのがわかった。
 滝瀬は鍵を使わずにドアノブに手をかける。ドアは無抵抗に開いた。
 玄関に見慣れた靴があった。その隣に革靴を脱ぎながら、部屋の奥へ呼びかける。
「おい、来てるのか?」
 すると、キッチンからエプロン姿の若い男が出てきた。
「先生、お帰り。夕飯の支度できてるよ。それとも食べてきちゃった?」
 今風の小さなフレームの眼鏡をかけた彼は愛想よく訊ねた。
「貴洋……おまえ大学のほうが忙しくなるからしばらく来られないって言ってなかったか?」
「うん、そうなんだけど、先生はちょっと放っておくとすぐに浮気心を起こすから心配になってね」
 眼鏡の奥の探るような視線が滝瀬を捉える。
 内心の動揺を隠して、滝瀬は平静を装った。
「まさか、浮気なんてするわけないだろう。おまえがいるのに」
 そう言って貴洋の身体に手を伸ばしたが、彼は寸前で滝瀬の手をかわした。
「どうだか。先生には前科があるからね」
 2年前、進路の相談を受けていた教え子との関係を疑われたときのことを蒸し返されて、滝瀬は深いため息をついた。
「あれは誤解だっただろう。っていうか、俺はガキには興味ないよ」
 貴洋は呆れた表情で腕組をした。
「なに言ってんの。先生がおれに手をつけたのは、おれが高3のときだよ」
「そうだっけ?」
「そうだよ! 忘れちゃったの? おれが卒業するのを待てないで、美術準備室でおれのこと押し倒したんじゃん」
「あ……」
 滝瀬はなにも言えなくなって、大事に手入れをしている顎ヒゲをぽりぽりと掻いた。
「で、今回はどんな子だったの?」
 すべてお見通しだぞ、と言わんばかりに貴洋が問い詰める。
「べつに手は出してないぞ。屋上の菜園の水やりを手伝わせてただけで……」
 言い訳っぽく聞こえてしまうのが自分でもわかり、思わず視線が泳ぐ。
「えっ、あの菜園まだやってるの?」
 その意外そうな口ぶりが、滝瀬をちょっぴり傷つけた。
「校長も黙認してるんだし、いいだろ、屋上で野菜を育てたって」
「野菜を育てるのは結構だけど、気に入った生徒を水やり係に任命して自分好みに育てるのはやめてよ」
 滝瀬はどきっとした。貴洋の鋭い指摘に、慌てるどころかむしろ感心してしまう。
「おまえはよく俺のことを理解してるよなぁ」
 すると貴洋は滝瀬に身体を摺り寄せ、滝瀬の首に両腕をまわした。
「だって、おれは先生好みに育ったでしょう?」
 にっこり微笑むと、貴洋は滝瀬の顎先にキスをした。
「なあ、夕飯ってなに?」
 滝瀬の唐突な質問に、貴洋はきょとんとする。
「シチューだけど?」
「じゃあ、それはあとで温めて食べるから、先におまえを食わせろ」
 ぷっと貴洋が吹き出した。
「その言い方、オヤジ臭いよ」
「おまえが足りないせいで禁断症状が出たんだ。責任取れよ」
 滝瀬は貴洋の首筋に顔を埋め、薄い体臭を嗅ぎ取ろうと鼻から大きく息を吸い込んだ。
 その頭を抱き込むようにして、貴洋は滝瀬の後頭部をぽんぽんと叩いた。
「はいはい。しょうがないなぁ、この先生は」
 ふたりはぴったりと寄り添ったまま、寝室へと消えていった。



END






【黒川編】

 あまり物を増やすのが好きでない黒川の部屋は、年頃の男の部屋とは思えないほど殺風景だ。その部屋の真ん中に、なぜか相田がいた。それは精巧に作られた愛玩人形のように、黒川の用意した座布団の上にちょこんと鎮座していた。恐ろしいほどこの場にそぐわない。
 なぜこんな事態になっているのかというと、きっかけは例の噂の犯人探しだった。
 口には出さないが、黒川としては中学時代からの親友が困っているのを黙って見ていることはできなかった。なんとかして水沢の力になってやりたかった。
 そこで独自にあの噂を流した犯人を追っていたところ、ついに相田に行き着いた。
 放課後、相田の姿を探して校舎の中をうろついていた黒川は、階段のほうから走ってくる彼女を見つけ、呼び止めた。
「二ノ宮のあの噂を流したのはおまえだろ」
 なんの前置きもなしに唐突に訊ねた黒川に、相田は素直に頷いた。
「そうだよ」
 彼女の話によると、水沢とはすでに対決済みだということだった。タッチの差で手柄を立て損ねた。が、黒川は水沢さえよければそれでよかった。
「もう解決したならいいんだ。すまなかったな」
 そう言って家路についた黒川のあとを、相田はなぜかついてきた。
 で、現在に至る。
「もう俺の用事は済んでるんだけど」
「気にしないで」
 それはお前が言うことじゃない。
 心の中で突っ込みを入れつつ、どうやってお帰り願おうか思案する。
 すると、相田が再び口を開いた。
「ねえ、あなた水沢くんのことが好きなんでしょう」
「……は?」
 目の前の人形がおかしなことを言っている。
 黒川はそう思い込もうとした。しかし、人形はさらにしゃべり続ける。
「私にはわかるのよ。あなた自身は気づいてないのかもしれないけど。大丈夫。私にはもう免疫がついてるから、その手の恋愛に抵抗も偏見もないわ」
 思わず黒川はカッとなった。
「でたらめを言うのはよせっ。水沢は親友だ」
「べつに、あなたがそう思いたいのならそれでもいいわ。けど、水沢くんのどこがいいのか私にはさっぱりわからない」
 その言葉に黒川もちょっと冷静になって、水沢のどこに魅力を感じているのか考えてみる。もちろん、親友としてだが。
「あいつは自分のことを腹の黒いペシミストだと思ってるけど、本当はもっと単純で、情に脆くて、意外と抜けてるところがあるんだ。だから危なっかしいというか、なんとなく放っておけないんだよ」
 相田は、ふんと鼻を鳴らした。
「私に言わせれば、彼はただのバカだわ」
 親友の名誉のために反論の言葉を探そうとしたが、黒川は途中でどうでもいいような気がしてきた。たしかに、今の水沢は恋に狂ったただのバカな男だ。王子と持て囃されていた頃の面影は微塵もない。
「そうだな。バカかもな」
 黒川は自分の中でなにかが終わっていくのを感じた。
 そこへ相田がとどめを刺す。
「あなたも相当なバカだけど」
 容赦のない言葉に、黒川はがっくりと項垂れた。
 この女は一体なにをしにここまでついてきたのだろうか。
 水沢にふられた腹癒せか? それともただの嫌がらせか?
 黒川の心中を察することもなく、座布団の上の人形が鈴を転がしたような声で言った。 
「ねえ、喉が渇いたわ」
「……お願いだから、もう帰ってください」



END



目次へ





「イン・ザ・ループ」では滝瀬と黒川のフォローをしてあげられなかったので、
番外編として彼らのその後を短編にしてみました。
でもやっぱり黒川は根っからの脇キャラですね。
滝瀬は教師を辞めたほうがいいと思います…。(ひみつメーカー参照)



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【8/12】
誠に勝手ながら当ブログを
活動休止とさせていただきます。

【5/16】
すいません。
現在、潜伏中です。

【5/7】
突然ですが模様替えをしました。
慣れないうちはなにかとご不便を
おかけするかもしれませんが、
何卒ご容赦くださいませ。

【4/23】
「お久しぶりです」の方も
「はじめまして」の方も
こんな隅っこブログにお越しいただき
どうもありがとうございます。
ご挨拶が遅れてすみません…。
ぼちぼち更新してまいりますので
これからもよろしくお願いいたします。


【1/3】
あけましておめでとうございます。
昨年中はこんなぐだぐだなサイトを
見捨てずに応援してくださり
本当にありがとうございました。
今年もお付き合いいただけると
うれしいです♪
どうぞよろしくお願いいたします。


【11/3】
長らく放置してすいません><
こんな状況でも訪問してくださる方
本当にどうもありがとうございます!
ひとことでも感想などいただけると
朔田が泣いてよろこびます~。


【6/14】
ご無沙汰してます。本文の文字を
ちょっぴり大きくしてみました。
少しは読みやすくなったかな?


【4/21】
現在、ちょーゆるゆる更新中です。
忘れた頃になにかがアップされてる
…かも……?


【1/19】
「浅葱色の少年」は完結しました。
応援してくださったみなさま、
どうもありがとうございました!


【1/15】
新作「浅葱色の少年」を更新中です。
かすかにBLが薫るお伽噺みたいな?
楽しんでいただければ幸いです♪


【1/15】
趣味でやっていた〈ひとり光画部〉は
閉鎖しました。ご愛顧ありがとうござ
いました。


【1/15】
「石榴館」はすてき絵師・東風さんと
一緒に遊んでる吸血鬼シリーズです。
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管理人:朔田圭子(さくた けいこ)

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