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窓を閉めながら、夏人は無難な言葉を探していた。
「まさか、こんなところでお前に会うとは思わなかったよ」
「おれだって……」
 形式ばかりで退屈な入学式が終了し、今、教室に残っているのは、夏人と弘の二人だけである。
 まだ戸惑っているのか、それとも一昨日のことが気まずいのか、弘は夏人と目を合わせようとしない。
 夏人は自分のしたことを詫びるべきか迷ったが、いまさら詫びたところで、子供らしい潔癖さを持った弘は決して自分を許さないだろう、と思いとどまった。
 何より、弘を遠ざけようとしてやったことだ。ここで謝ってしまっては意味がない。
 夏人の目には、弘もその話題に触れられることを避けているように見えた。ならば、わざわざ終わってしまったことを蒸し返して、これ以上事を荒立てるのは、得策とは言えないかもしれない。これからは、担任と生徒として付き合っていかなければならないのだから。
 そう、教師と生徒。それ以上でも、それ以下でもなく。
「お前も今日からここの生徒か。いまいちピンとこないな」
「隣の市だもん。自転車通学圏内だよ。別に不思議じゃないだろ?」
 言いながら、弘は机の上にひょいっと腰掛けた。
「ここはそんなにレベル低くないぞ」
 夏人は意識的に弘の正面を避け、斜前あたりで窓に凭れた。
「え、おれのことバカだと思ってたの? ひでえなぁ」
「バカというか、まだ充分、中坊で通用するというか……」
 弘は怒ったように鼻にしわを寄せ、「イーッ」という顔をした。
 今日から高校生といっても、子供っぽい印象は変わらない。身体の成長を見越した、ちょっと大きめの制服が、余計に弘を幼く見せている。
「ネクタイ、似合わないな」
「夏……先生だって、そういうカッコしてると別人みたいだよ」
 弘は「夏人さん」と言いかけて「先生」と言い直した。
 それはおそらく、夏人と過ごした時間を忘れ、新たにごく普通の教師と生徒の関係を築こうとする弘の意思の表れなのだろうと理解した夏人は、一抹の寂しさを覚えながらも「先生」という呼称を受け入れる。もう、夏人が「弘」と呼ぶこともないだろう。
「男前だろ?」
 見慣れた顔で、弘が笑った。
「そうして前髪上げてると、本物の教師みたいだよ」
「みたい、じゃねえよ」
 夏人は少しだけ安堵した。
 その拍子に、大事な用件を忘れていたことに気づいて、夏人は思わず前のめりになる。
「そう言えば、お前の名字は川島じゃなかったか?」
「野中は母親の姓だよ。親父が浮気して離婚したんだ」
 たいしたことではない、という顔で、弘はさらりと言いのけた。
「離婚? この春休みの間にか?」
「もっと前。でも、急に名字が変わるとみんなが理由を訊きたがるだろ? いちいち説明するのも面倒くさいから、中学の間はそのまま父親の姓を名乗ってたんだ」
「そうだったのか……」
「二年前からずっと別居してたから、今更って感じだけどね。おれは今でも時々親父に会ってるし」
 弘の明るさからは、不幸な家庭の事情など微塵も感じられない。
「今日はお母さんが来てたのか?」
「誰も来てないよ。母さんは仕事だし。休みが取れなかったと言うより、仕事が趣味みたいな人だから、もともと休みを申請してなかったんじゃないかな。まぁ、ついて来られても恥ずかしいけど」
 あっけらかんとした口調の裏に、諦めのような感情が見え隠れしている。
「本当はおれを引き取る気もなかったんだと思うよ。でも、親父はもう相手の女の人と暮らし始めてたし、教育上よくないとか言ってさ。本当のところは、女の意地ってやつだと思うけどね。結構きつい人だから。親父が逃げたくなった気持ちもちょっとはわかるよ」
 子供は子供なりに、いろいろと考えるところがあるらしい。
 夏人は深刻になりすぎないよう気をつけながら、慰めの言葉を探した。
「まあ、大人になって社会に出れば、親の都合に振り回されることもなくなるさ。今はせいぜい、母親に余計な心配をかけないようにいい子でいろよ」
「……そうだね」
 弘は曖昧に微笑んだ。





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そうなんだ・・・
7話で二人の関係と環境がはっきりしてきましたね。
謎のままでも、ふわっと感情が触れたり離れたりしていたので、この後は鮮明にお話が展開していきそう。
なんだか、泣けちゃう予感が・・・気を引き締めて読みます。
adocyan 2009/01/02 09:28 *edit
どんな話だったっけ?
…と思ってちょこっと読み返してみたら文章が拙すぎて恥ずかしい!
adocyanさんにコメをいただくと、なんかもう居た堪れない感じです(笑)。
深く考えずにさらっと流してください~!
朔田圭子 2009/01/03 00:35
なんちゅう事を・・・
朔田さんほどの方が・・・私から見れば完成された文章です。
心して読みます!(さらっとって言ってるのにいじめ?)
adocyan 2009/01/03 06:35 *edit
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誠に勝手ながら当ブログを
活動休止とさせていただきます。

【5/16】
すいません。
現在、潜伏中です。

【5/7】
突然ですが模様替えをしました。
慣れないうちはなにかとご不便を
おかけするかもしれませんが、
何卒ご容赦くださいませ。

【4/23】
「お久しぶりです」の方も
「はじめまして」の方も
こんな隅っこブログにお越しいただき
どうもありがとうございます。
ご挨拶が遅れてすみません…。
ぼちぼち更新してまいりますので
これからもよろしくお願いいたします。


【1/3】
あけましておめでとうございます。
昨年中はこんなぐだぐだなサイトを
見捨てずに応援してくださり
本当にありがとうございました。
今年もお付き合いいただけると
うれしいです♪
どうぞよろしくお願いいたします。


【11/3】
長らく放置してすいません><
こんな状況でも訪問してくださる方
本当にどうもありがとうございます!
ひとことでも感想などいただけると
朔田が泣いてよろこびます~。


【6/14】
ご無沙汰してます。本文の文字を
ちょっぴり大きくしてみました。
少しは読みやすくなったかな?


【4/21】
現在、ちょーゆるゆる更新中です。
忘れた頃になにかがアップされてる
…かも……?


【1/19】
「浅葱色の少年」は完結しました。
応援してくださったみなさま、
どうもありがとうございました!


【1/15】
新作「浅葱色の少年」を更新中です。
かすかにBLが薫るお伽噺みたいな?
楽しんでいただければ幸いです♪


【1/15】
趣味でやっていた〈ひとり光画部〉は
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